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□き み がいれば
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※m o n o m a n i aの続き
 レプリカ視点








「ルーク…ルーク………」
「あっしゅ…」


俺がアッシュ、と呼ぶと、アッシュはすごく安堵した表情を浮かべることを、俺は知っている
その表情を見たくて、顔を上げれば、アッシュは目を細めて額に口付けてくれた
その所作がくすぐったくて、つい笑みが零れてしまう




俺、が造られてから、アッシュとはずっと一緒にいる
何かから逃げるように、俺を隠そうとするアッシュの腕の暖かさは、とても心地いい−−−

だけど、この心地よさは脆さを含んでいることを、俺は理解している




ときどき、アッシュの知り合いが来ては、俺を辛そうな目で見る
懐かしそうな、それでいて直視できないというように目をそらす
そのとき誰もがアッシュを「ルーク」と呼ぶ
アッシュは凄く嫌がってるみたいで、
そのたびに「ルークはお前の名前だ」って言ってくれるけど、

でもね

俺にだって、わかるよ
俺が、


'ルーク'、ではないことくらいは









「今度、」

不意にアッシュが俺に語りかける

「海を見に行こうか。お前は屋敷を出るまで見たことがなかったから旅とは別にゆっくり見たい、と言っていたしな」

「…うん」



俺の、知らない'ルーク'

アッシュと'ルーク'しか知り得ない、2人だけの記憶




それを確認するように、アッシュは俺に語りかける
まるで俺に記憶を植え付けるかのようだ

そんなアッシュに一抹の寂しさと、緊張を覚えていた
俺、ではなく、'ルーク'を求めているアッシュ
'ルーク'を見つめる目は、とても優しくて、俺がアッシュの想いを受けているのだと錯覚してしまいそうだった
これは、俺に向けられているものじゃない、と思うといつも胸の奥が苦しくなった

そして、アッシュが気付いてしまったら、と同時に思うようになった
俺からアッシュが離れてしまったら…



そんな想いに身を焦がしていたことも

とうに昔のことだ
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