その他

とある極道一家の嫁取り事情
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父にくしゃくしゃと乱暴に頭を撫でられた幼い少年が、痛いと悲鳴を上げている。
それに彼の父は、悪い悪い、と笑いながら手を離した。

「リクオー!」

そんな時だった。
声変わりをまだ終えていないような少し高めの少年の声が、リクオと父、そして彼らの傍らにいた首無しの耳に届く。

「鴆くんだっ」

それに一番に反応したのはリクオで、リクオは父の腕の中で、降りたいと言うようにじたばたと急にもがきだす。

「こら、降ろしてやるから暴れんな。…って、待てっリクオ、お前裸足だっただろっ」

彼を地上に降ろした父は、屋敷の中からリクオを抱き上げて連れてきていたことを思い出し、彼が草履も履いていないことに気付き、慌てて制止の声を上げるが、リクオはかまわず、裸足で一目散に声のした方へ駆けていく。

「鴆くん、みぃつけたーっ!」

がさり、と葉を揺らし、彼らの前に現われたのは、羽の紋様の入った羽織を着た少年で、リクオは飛び付くように彼に抱きつく。

「わっ、リクオっ…見つけたのはこっちだっ!」

突進してきたリクオの小さな身体をなんとか受けとめた鴆は、いっぱい探したんだぞ、とリクオに文句を言う。

「よぉ、鴆坊」

そんな彼に、リクオの父は声をかけた。

「二代目っ!」

その声に弾かれたように顔を上げた鴆は、彼の姿に、猫のように吊り上がった瞳を、まんまるに見開く。

「お、お久しぶりですっ」

憧れてやまない人と久し振りに出会え、鴆は興奮に頬を赤く染めながら、勢い良く頭を下げた。

「ああ、久しぶりだな。いつもリクオと遊んでくれてありがとな?」

膝を折り、目線を鴆と同じにして二代目が彼に礼を言えば、鴆は、滅相もないとでも言うように、ぶんぶんと首を横に振った。

「遊んでもらってるのは…オレの方です」

緊張で少し震えた声で鴆がそう返せば、二代目は、長い前髪から覗く目を穏やかに細め、彼の頭を優しく撫でた。

「っ…」

二代目に頭を撫でられ、感動に、鴆の瞳が潤む。

「あ、あの…二代目っ。…オレ、リクオを二代目のような立派な妖怪総大将にしてみせます!」

感極まった鴆は、心に抱いていた決意を、二代目に向けて誓った。

「!」

鴆の言葉に、あ、と首無しは口を開けたが、彼が言葉を発するより先に、二代目は、惚れ惚れするような男気溢れる笑みを鴆に見せた。

「そいつはぁ楽しみだ。…期待してるぜ?鴆」

そんな笑みと共に、期待しているとまで言われ、鴆は卒倒しそうになるが、なんとかそれを耐え、はいっ!と上気した頬で元気良く返事を返した。
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