魔魅流×竜二

許\走わんこ。
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竜二は、自慰が嫌いである。
その理由は、自慰は他者に任せた時の、あの予測不能な快楽がなく、自分の手で行うため、得られる快感に限度があるからだ。
そのため、達するまでに時間がかかる。
そうなると手が疲れてくる。
しかも、達することが出来たとしても、絶頂感の大きさはあまり期待出来ない。
だから竜二は、その行為を無駄だと思っていた。
しかし、そうも言ってもいられない時がある。
多忙を極め、誰かとセックスする暇も無かった時など、溜め込み過ぎたツケがくる。
言わば身体が欲求不満に陥ってしまうのだ。
そんな状態の時、肌が敷布に触れるだけで、身体が疼き、目が冴えてしまう。
こうなると抜かなければ、寝られなくなる。
しかもそんな状態では、身体が過敏になりすぎてしまい、今度は他者の愛撫では刺激が強くなってしまうのだ。
今宵、その欲求不満の状態になってしまった竜二は、布団の中、横向けに体を丸め、寝間着の浴衣の裾の中に、そろりと手を差し入れる。
そして下着を膝まで下ろした彼は、片手で自身を掴む。

「っ…」

それだけで電流が流れたように身体が跳ね、彼は声を飲み込み、手の力を緩めた。

「ァ…っ」

しかし、それでは一向に抜けないため、彼はまた手に力を入れ、自身をしごく。

「ふ…ぅ…ぅ」

すぐにその手は湿り気を帯び、瞬く間にくちゅくちゅと音が鳴りだした。
手の滑りが良くなって、自分の手であっても身を捩りたくなるぐらいに気持ちが悦い。

「ぃ…あっ」

蜜がしたたる先端の割れ目を指の腹で擦れば、腰が跳ね、じわり、と涙まで目元に滲む。

「ふ…っく…」

声を上げたとしても誰も聞いていない。
だが、竜二は声を殺すために、自分の肩口の浴衣を噛んだ。
浴衣が、唾液で濡れる。
先端を数回擦っただけで早くも込み上げてくる絶頂感に、竜二はぎゅっと目を閉じ、蜜口に軽く爪を立てた。

「っー!」

竜二の手の中で熱が弾け、中を、どろり、と汚す。

「はぁ…はっ」

荒い息が竜二の口から漏れ、竜二は汚れた手を敷布に擦り付けて拭い、自分の身体を掻き抱いた。
果てたというのに、まだ渇望が癒せない。
その理由を、竜二は知っている。
内側から満たされる悦びを、身体は覚えているのだ。
彼の内部は、アレが欲しいと乞い始め、肉壁をひくつかせる。

「っ…」

竜二は渇望による疼きに耐えかねて、一度、浴衣の中から抜いた手をまた再び、そろりと浴衣の中へ入れた。
そして後孔に向かわせようとして指を止める。
指でしばしの飢えを誤魔化せるが、それは完全には彼を満たしてはくれない。
それだけならまだしも、さらなる渇望を、彼に植え付けるだけだ。
どうにも出来ない状態に陥ってしまった竜二は、唇を噛む。

「クソ…忌々しい…」

だから自慰は嫌なのだと、次から次へと文句が頭の中に浮かんでくるが、身体の火照りは鎮まらない。
彼はついに、彼が一番とりたくは無い手段を取ることにした。

「…る…魔魅流」

微かに唇を動かし、竜二は、己の声に言霊の力を乗せる。

「来い、魔魅流」

竜二がそう命じた瞬間、夜風が、竜二の髪を撫でた。夜風を部屋へ侵入させた障子戸の隙間はすぐに閉じられ、風と共に部屋に入ってきた長身の青年は、竜二の傍らへ寄る。

「呼んだか?竜二」

人形めいた白皙の美貌を持つ青年の問いに竜二は、ああ、と返事を返し、腕を伸ばす。
それに気付いた魔魅流は、竜二の手が触れやすいよいに膝を畳についた。
距離が近づいた魔魅流の頭を、竜二はくしゃりと撫で、柔らかな髪質を楽しむようにまた撫でる。
その手触りは、竜二が求めた存在の到来をつげており、竜二の唇が綻ぶ。

「早かったな」

そして竜二は、良くやったとばかりに、まるで犬でも褒めるように魔魅流を褒めた。

「部屋にいた」

だから早く来れたのだと、自分がいた場所を告げた魔魅流は、竜二の手を捕まえ、彼を引っ張って両腕で抱き締める。
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