雅次×竜二
□牛処
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埃一つ落ちていない、綺麗に磨き上げられた廊下を歩きながら、竜二は、学生服の詰襟のフォックを外した。
自分の前を歩いている白い羽織を羽織った黒い着流し姿の男の癖のある髪を見上げていた竜二は、男が足を止めたのと同時に、自分もまた足を止める。
「何か飲み物でも持ってこようか?」
自室のドアを開けた雅次の問いに、竜二は逡巡した後、うなずく。
「なら、用意してこよう。一人でおとなしく待っていられるかい?」
次に続いた問いに、竜二は子供扱いするなとばかりに雅次を睨む。
竜二の態度に、雅次は優しい笑みを見せただけで何も言わずにきびすを返した。
一人残された竜二は、雅次の部屋に入り、ドアを閉める。
部屋に足を踏み入れたなり、薔薇の香りが竜二の身体を包み込んだ。
むせ返るようなその芳香の元を探せば、黒いテーブルの上に置かれた白い一輪挿しに生けられた、大輪の白い薔薇が竜二の視界に止まる。
純白、という言葉は、あの薔薇のためにあるのだと思えてしまうほどに、真っ白な薔薇は、気品をも備え、そこで優雅に咲き誇っていた。
薔薇の美しさに目を奪われた竜二だったが、その匂いが馴染めず、テーブルの傍に置かれたソファーではなく、遠く離れたベッドに腰掛ける。
それから5分ぐらいして、洋風の華美な装飾がされた盆を持った雅次が部屋に入ってくる。
「雅次義兄さん」
雅次が竜二に茶を勧める前に、竜二は雅次を呼んだ。
「もう喉は渇いてないんだ…だから…早く…してくれないか?」
薔薇の香りに耐えきれなくなった竜二は、自分がここへ訪れた用件を早く済ませてしまおうと雅次を急かす。
「わがままな子だ」
雅次は、そう肩をすくめる振りをするが、その声は甘く、竜二の隣に座って彼の頭を撫でる。
それに竜二は、また子供扱いされたと不満を抱きながらも、おとなしく頭を撫でられる。
「では…始めようか」
その言葉の後、雅次の手が竜二の穿いている学生服のズボンのベルトにかかり、竜二は、咄嗟に雅次の手を掴んだ。
それはもう反射的といってもいい素早さで、明らかに、竜二の色素の薄い瞳が動揺してる。
「私に、して欲しいと言ったのはお前だろう?」
雅次の言葉に、竜二は唇を噛んで視線を反らす。
「自分で…脱ぐ」
雅次と視線を合わせぬように目を伏せていた竜二は、自分でベルトを外し、ズボンを脱いだ。
下着はつけているが、紺の学生服の裾は長く、何もはいていないように見える。
竜二と雅次は、同性だが、思春期のお年頃の少年には、今の姿は、耐え難いくらい羞恥を感じるもので、竜二は目元を赤らめ、学生服の裾を引っ張りながらうつむいている。
「竜二、今度はベッドに横になりなさい」
しかし、雅次は気にせず、酷ともいえる指示を出した。
それに竜二は、嫌だとも言えず、ベッドに仰向けに身体を横たえる。
「っ…」
あまりに恥ずかしくて、いたたまれなくて、じわり、と視界がにじみ始め、竜二は、片腕で目元を隠した。
「雅次…義兄さん…っ早く…してくれっ」
そのまま放置されているのも嫌で、竜二は、再度雅次を急かした。
その時、あの薔薇の香りが、更に増したように竜二は感じた。
「ア…ッ」
白い靴下を履いた足に雅次が触れれば、竜二はびくついたように上擦った声を上げる。
「そういえば、どこに付けてほしいか聞いてなかったな…どこがいい?」
少年の、滑らかな肌を楽しむように竜二の足を撫でながら雅次は尋ねる。
「み…見えないとこなら…どこでもいい…だから…お願い…だっ…もっ…早く」
耳まで真っ赤にした竜二の声は、とうとう涙声に変わた。
「じゃあ…ココにしよう…」
竜二の返答に、薄らと酷薄そうな笑みを浮かべた雅次は、竜二の片足の膝裏を掴み、おもいっきり開かせる。