オリジナル小説(短編)

□月を明かす
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八月十六日。西の空が鮮やかな茜色に染まり、あぁ、明日もいい天気だなぁと思いつつ、思い思いを胸に早くこの暑い場所からクーラーのある涼しい我が家へ、と足早に歩いているその時、一人の男性がようやっと起きてきた。
今頃起きてきてなんてやつだ、けしからん、とお思いの方もいるでしょうが、この男性は朝早くに起きて仕事をしていたのです。と本当は書きたいところですが、実は今日の朝、お天道様が顔を出した頃に夢の世界へと入り、今のそのそとまだ眠たいなぁとぶつぶつ文句をいいながら起きたところなのです。それには訳があります。身なりはどこにでもいる平凡な男性ですが、中身・・・もやっぱり平凡な男性だったりします。そんなどこにでもいる平凡な男性が働きもせず、何故朝から夕方まで寝ていたかというと、それは昨日の夜に原因があったのです。
昨日は日本人の誰もが知っていそうで最近の人の大抵が忘れていることの多い、十五夜の日だったのです。
え?何故それが朝寝の許される理由かって?まぁまぁ、少し待ってくださいよ。それを今から説明するのですから。
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