オリジナル小説(短編)

□雨
1ページ/6ページ

ぽつり、ぽつりと雨が降ってきた。
まだ今夜の宿も決まっていない。
僕は途方にくれ、意地悪そうな暗い空を見上げた。
降り出した雨はやつれた僕の体を徐々に濡らしていく。
そういえば、最後に胃に食べ物をあげたのはいつだったろうか。
一体なにを食べたのか。
どうせろくなものではないが。
いや、米粒一つでも、身のない魚でも、食べられるのならばそれは僕にとって大切な大切なご馳走であることに代わりはないのだ。
汚れで元の色さえわからない自分の身体を見下ろす。
身体も洗えていない。
食事も今日食べる分でいっぱいいっぱいの生活だから脂肪どころか筋肉もない。
骨は浮き出て数えようと思えば数えられそうだ。
何回目になるか分からないため息をついた。
とにかく今は雨を凌げるところへ移動しなければならない。
動こうとしない足を気力で持ち上げ、近くの軒下に行こうとのそのそ動き始めた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ