Normal Love

□I am ready for…
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《I am ready for…》



閉ざされた世界の中で、孫悟空は目を覚ました


微かに汗ばみ、シーツに貼り付いていた身体を起こすと大きな深呼吸を一つする



―また、あの夢か―



隣で眠る息子の存在を確認すると傍らの戦闘服に手を伸ばした。この夢を見た後はいつも決まって寝つくことはなかなか難しい



孫悟空は夢をほとんど見たことがなかった
セルを葬り去る為に息子と二人、精神と時の部屋に入る日までは



この部屋で修行を始めてから、毎晩同じ夢を見るようになった


真っ暗な空間に一人ポツリと置き去りにされる夢


暗くて寂しい、深い深い果てしのない闇の中で自分は一人、無表情で立ち尽くしている


誰かいないのか、と叫ぶ訳でもなく
絶望する訳でもなく
許しを乞い泣き叫ぶ訳でもなく
光を求めて出口を探すこともしない


ただ、人形のように立ち尽くすだけだった



暫くすると、何処からか声が聞こえてくる
闇に視界を閉ざされて、声の主は分からない
分からないが、聞こえて来るのはいつも決まって同じ言葉



――いつおまえを連れていこうか




孫悟空は不思議な事に、その穏やかならぬ夢が嫌いにはなれなかった
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