若詩

皇帝の衣
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ねぇ、荊軻





始皇帝は僕を大切にする

僕はそれに応えるため

毎日お側にお仕えしては

拙い筑を奏で続けている





本当はブッ殺してやりたい!

僕の友を 僕の光を 返せ!!






部屋で二人きりになった

不意に、

僕は皇帝の衣の袖を掴んだ

盲目の僕には何も見えない

けど何となく

キミが最期に掴んだそれに

触れてみたいと手を伸ばしたら

たまたまあったんだ





あいつは咄嗟に警戒した

僕は殴られる覚悟もあったけど

張り詰めた空気はすぐに緩んだ

掴んでいた袖が変に動いて

両肩に柔らかい重みがかかる





僕を試しているのか?

生憎、両目潰されたくらいで

復讐諦めるような半端な性格

してねぇンだよ!!






再び僕は筑を奏で始める

その音色に混ざって

遠い日に見送ったキミの

最後の声が聞こえる



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