若詩
□三日
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買い物の帰りに道を歩いていると、私の隣で、一台のタクシーが停まった。
「おう」
運転席の窓から顔を出したのは、仕事中の主人だった。
「どうしたの? 仕事じゃないの」
夫はタクシー会社に勤務している。
真っ昼間に仕事をさぼって何をしているんだ、と思った。
「あと三日で、退職するんだ」
こともなげに云う。
結婚して以来暇もなく、たまの旅行以外は一緒に買い物も出来なかった。
私はつい嬉しくなって、
「本当!? じゃあこれで、どこへでも連れていってもらえるんだね!」
そこで目が覚めた。
亡夫、あなたが亡くなってから三日後のことだ。