白詩

□紫陽花
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黒い髪 白い肌
虚ろな瞳は何も見ておらず
美しい唇は半開きのままで
日がな一日 縁の日影に座り

一言もしゃべらず
何事にも動じず



俺はその隣に座り
日がな一日 この人を見つめ
時には話しかけたり
喉が渇いて台所に上がったり

夜は冷えるよ と
奥座敷に連れていって寝かし
朝、椋鳥の声で目覚めた人を
また縁側へ連れていって
日がな一日







雨上がり 雲の切れ間
金のカーテンのひるがえる
庭先に植えられた紫陽花
重い若紫を開いてる、さなか

庭がきれいだ、ほら。

って云いながら振り向くと
半年ぶりかな 目が合った




ドキッ







しばらく見つめ合った
この人のこの目を
放したくなかったから



二人の間を 烏がよぎり
不意に反らしてしまった目線は
無情にも もう戻りそうにない



だけど すごく幸せだった

また明日からも、俺は、
あなたのために生き、る



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