慕詩
□布切れ
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屋敷の庭先に南天がある
沢山の赤い実が雪を被っている
でも、
俺の目を引き付けたのは
赤い実などじゃなくて
南天の枝に結ばれた
一枚の布切れ
歌が書いてあった
普段はこんなもの
決して詠まないのに
笑いをこらえながら読んだ
貴方はきっといつもの
難しごとを考えるような
渋面をして
これを書かれたのでしょう
そんなに何でも難しくしないで
俺はもっと簡単でいいのです
「愛してる」って
一言云ってくださるだけでいい
一緒にいてくださるだけでいい
恋は詭道じゃない
その布切れを
俺は大切にしまった
いつか貴方と結ばれた時
嘲笑できるように
Fin.