BL+日常

□息も止まるような
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煙草に火を点ける中条を、毛布に包まったままぼんやり見つめていた。
ふわりと漂う煙から逃れるようにもう一度毛布に潜り込む。
すると。


「………ひっく」


静かな部屋に響いた小さな音。
聞こえた音に煙草を吹かしていた中条は振り返った。
その音の発信源はおそらく美柴だ。
起き上がった美柴は口元を手で覆って、喉を鳴らす。
そんな姿を眺めながら、ゆっくり煙を吐き出した。


「なんだ?しゃっくりか?」

「………すぐ、止まる…っく、…」


そう言いつつも、途切れ途切れになる返事。
唾液を飲み込んだり、息を止めたりと。
美柴なりに色々試しているようだが、しゃっくりは治まりそうにない。


「水でも飲むか?」

「……っく、…」


手で口を覆ったまま黙って頷く美柴。
中条はテーブルの上にある灰皿に手を伸ばし、煙草をもみ消した。
そのまま立ち上がって流しに向かう間も、背後からはひくひくと声が聞こえていた。
きゅっと蛇口を捻ってコップに水を注ぎ、それを差し出す。


「ほら、飲めよ」


美柴はコップを受け取ると、息を止めて一気に水を飲み干した。
空になったコップに視線を落とし、しばらく様子を見る。
中条もベッドに腰をかけてその様子を窺っていたが、しゃっくりは出ない。
やっと止まったか、と思ったのだが。


「………ひっく」

「…止まらねぇな」


再び聞こえてきた音に、中条はため息を吐いた。


自分が知っている方法はすべて試したらしい美柴は、小さく肩を震わせ黙っている。
珍しく困った様子に思わず笑みを溢せば、それに気付いた美柴がこちらを睨んだ。


「悪かったって。睨むなよ」

「…っ、……っく…」

「脅かせば治まるんじゃねーか?それ」

「……言ったらっ、…意味ないだろ」


中条はそう言いながら美柴に近づく。
二人分の重みにベッドが軋む。
にやりと笑った中条に嫌な予感がして、身体を押し返そうとしたが遅かった。


「…っ?!」


ぐいっと引き寄せられ、唇を塞がれる。
驚いて頭を引こうとするが、中条はそれを許さない。
後頭部をしっかり押さえつけられ、深く口付けられる。


「んッ…、ぅ…」


美柴の口から甘い声が漏れ始めると、口付けはさらに深くなる。
息が続かなくなってきたところで、漸く唇が離れていった。


「……ッ何する…」

「びっくりして止まったろ?」

「…………、…」


言われて気付く。
中条の言うとおり、しゃっくりは止まっていた。
止まったのはいいが、どう反応していいかわからず美柴は黙り込む。



「んじゃ、落ち着いたところでもう一発ヤッとくか」

「…何でそうなるんだ」

「止めるの手伝ってやっただろーが」

「別に頼んでない」


美柴は平静を装いそう返すが、動悸は激しいままだった。










も止まるような


(キスをして)





20091106



しゃっくりが止まらない鴇は可愛いと思う。


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