雑書置き場
□隠れてた心
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ただの幼なじみ、そんな枠から俺がはみ出してしまった事に気づいたのは旅を続けてしばらく経ってからだった。
昼夜を共にして、さらにあいつを知って、仲間ができて…
他のヤツらに目を向けるアレクを見て心の奥に針が刺さった感覚を覚えた時、あぁ、俺はあいつが好きなんだって感じた。
「アレクさんやりました!新しいモンスターカードですよ!」
「おぉ、やったじゃないかテオ!だいぶ手慣れてきたな!」
優しい笑顔を見せるのは、なにも俺だけじゃない。それを思うとため息が出た。
「(少しだけ、ほんの少しだけヤキモチかな…)」
「どうしたルッツ、顔が紅いぞ?」
「っ!?」
あれこれ考えてる俺の視界にアレクが入ってきた。
「い、いやっ!!なななんでもねぇよ!!」
もたれていた窓際にさらに身を寄せてたじろぐ俺の身体は、アレクの手にがっしり捕まり強制的に向かい合わせの状態にさせられた。
「ほ、本当に大丈夫だって…」
「なに言ってるんだ。気分悪いのか?もしかして熱があるんじゃ…」
そう言って顔を近づけ、ゴーグルを少し上にあげ、外に晒されたデコが俺の額に重なって。
その瞬間、頭が真っ白になって顔も温度と色が増し、思わず声を上げた。
「っにゃぁぁぁあぁぁぁっ!!!!」
その声に周りのヤツらが思わず振り向いた事など全く気にならず、俺は今起こった事態にワケが判らなくなって涙を流してしまった。
「わ、わ、ごめんルッツ…なんか僕悪い事したなら謝るよ。だから泣くな…」
「っう、ちが…ごめっ、アレクゥ…」
一体どうしたんだ俺…声も出ないくらい詰まった息で言葉が紡げずに、居心地が悪くてとにかく外へと走り出た。
「あ、おいルッツ!!」
「ちょっと、アイツどうしたのさ。」
「あんなルッツさん、初めて見ましたよ。」
「わからない…とにかく、連れ戻してくる!」
走りまくって自分が息切れしているのに気づき、速度を徐々に落としていって立ち止まる。
辺りは夕暮れ前の柔らかい光に包まれていた。
「はぁ…どうしよ。とりあえず頭冷やそう。それからいつも通り軽く謝って…」
そんなシチュエーションを想像しながら息が次第に整っていく事に安心を覚えていく。
「いつも通り…いつも通りに、だ。」
「ルッツ!!捜したぞ!」
背後から聞こえた声にせっかく整ってきた肩と心臓が再び跳ね上がった。
「っ!!アレク…ッどうして…?なんでついてきたんだよ!!」
「お前が勝手に飛び出したりするからだろう!」
声を張り上げて言うと同じ声量で返され少し驚いた。
近づいてくるアレクに反発するように足は退け続ける。しかし俺の身体はすぐにあっさりと捕らえられ、
「捕まえた!ほら、何があったかとっとと白状するんだ。」
真っ直ぐに俺を見据える瞳。いつだってその眼は俺の前にあって、奥で俺が揺れていた、
…違う。揺れていたのは俺自身の瞳だった。
「…っ、う、…見るなよぉ…」
大の男が大粒の涙を流しながら反発しても気持ち悪いだけだろうな、なんて内心考えながらアレクから目を逸らす。
「……どうしたんだ?ホント。」
それでも優しく聞いてくる声に胸が高まった。
「わかんねぇ…ただ最近、アレクの背中任されたりずっと一緒に居るようになってから、お前の事考えただけで心臓がバクバクするんだよ…それがめちゃくちゃ苦しくて苦しくてやべぇんだ。」
アレクは俺を見据えたまま、ただ静かに聞いてくれていた。
「わかればわかるほどその気持ちがでっかくなってさ…」
俺の肩に支えられた腕に少し力が入るのを感じて余計に痛くなる心臓がうるさい。
「おかしい…っ!!こんなの俺じゃないっ!!」