prf.Layton.
□幾度目かの約束
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ボクと同じ歳にパパもママも一瞬で失ったクラウスさん。
ボクはどちらもまだまだ元気で、それなりの幸せというのも与えられている。
じゃあ彼は?
「クラウスさんは今、幸せですか?」
「どうしたんだい?藪から棒に。」
不思議そうに見つめられ笑われる。ちょっと考えるように顎に指をかけている横顔。返事を待つためにジッと見つめていた。
「そうだなぁ…幸せ、とは違うかな?」
そう言って笑う。
ボクは更に疑問だらけになった。
「?…じゃあ、なんて言うんですか?」
「キミで言えば、美味しい物を食べるときと、お腹がいっぱいになった時の気持ちの差。」
「なんだか余計わかんなくなっちゃった。」
そう答えるとまた微笑んで頭を撫でて。
「僕がキミくらいの時には、何もかもが幸せに溢れていた。土地、暮らし、周りの人たち、そして家族。」
「でもそれは幸せを通り越して当たり前になってしまっていた。」
当たり前、それは幸せとは似て非なるものなんだ。そう彼は呟いた。
「実はね、僕はルーク・トライトンという存在が羨ましくて、そして嫉ましかった。」
「えっ」
次の言葉を発する前に口元に指があてられた。
「今はそんな気持ち無いよ?でも
、だからこそキミを造ったのかもしれない。そしてルークを偽っていく中で、キミへの興味が強くなった。いつしか、どうかこの「ボク」だけでも幸せになって欲しいって、思うようになったんだ。」
そう言った笑い顔を見て何故だか気持ちが焦った。この人は、またどこかへ行ってしまう。体が自然に動き、クラウスさんの腰に手をまわして抱きついた。
「ルー、ク…?」
「…なります!なりますよ!そりゃあ、ボクはクラウスさんの過去の苦しみなんて、大切なものを失う悲しみなんてわからないけど…貴方がそれを望むのなら、全身全霊で幸せになってやるんですから!」
思わず大きく声を上げてしまった。でもずっと溜まってた何かを吐き出したかった。
「…ぅん。ありがとう。こんな事、僕のただのエゴに過ぎないかもしれないのに、キミは本当に優しいね。」
声は、弱々しくて。
全ての苦しみから逃れるように罪を犯してしまった彼。
こんなにも優しい彼を豹変させてしまった事件を、ボクはまったく知る事はなかった。出来なかった。
「もう、苦しまないで下さい…クラウスさん。何かが出来るってわけじゃないけど、ボクは貴方のそばに居ます。ずっとずっと居ます。だから、2人で幸せ
になりましょう?」
目を見開いて見つめられ、体がぴったりくっついて、抱き寄せられたんだと気づいた。
「本当にキミは…危機感に欠けているよ、ルーク。」
「褒め言葉ですよね?それ。」
今からだってきっと大丈夫。過去を知らなくたって、ボクが好きな彼に変わりはないんだから。
抱き締めてくれる腕の温もりを感じながら、2人のこれからの幸せを祈った。