□【10端午の節句】
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被っていた覆面を外せば乱れた髪。
所々見れば土のついている制服。
自分から舞い上がる薬品臭。



「…早く帰ろう。」



世話当番も漸く終えて自分を省みたら酷い格好。
着替えたいしシャワーも浴びたい。あ、お茶もしたい。
そんなことを考えていたら、突然出逢った。
それは、まるで初めて出逢った時みたいに。



「あ、桜鬼。」




道なき道から出てきた瞬間の彼は驚いた顔。でも、それ以上に驚いたのは自分。
振り替えって、もと来た道を駆け出そうとしていつかみたいにその手に捕まった。



「…な、何よ!離してよ!」



振り払いたいのに振り払えない。見られたくないのに、真っ直ぐな瞳に自分が映る。



「‥ごめん、無理。」



謝られた言葉に、困惑。
何故かと問う前に解決された疑問。



「普通科までの、道教えて。」



どうやら、迷子。
あまりに真剣な眼差しに失笑。



「あんた、馬鹿じゃない?そんなの…まあ、いいわ。普通科まで案内してあげる。」



本当は、自分を見つけた時みたいに感覚を研ぎ澄ませて、気配を辿れば簡単なんだろうけど。なんだか、少しでも一緒に居たいと思った。



「…こっち。」



ボサボサの髪とか泥塗れだとか薬品くささだとか、気になることは一杯あるけど。
よく見ればそれは相手も同じ。それだけ、自分のやるべき事を懸命にこなしてる証拠だね。









20100523
一生懸命なあなたが好きです。
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