贈
□【08クリスマスフリー】 高速エイジ
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狼遠
「なぁ、ジョセフィーヌ。もうすぐ、クリスマスだな。」
『そうね、狼。』
いつものように裏声を使っての狼との会話。
いつもと違うのは、自分が隠れて、狼から見えないような位置に居ることくらい。
「?いつもよりも声が小さいな。どうかしたのか?」
『ばれちゃいけないんでしょ?』
いつもうるさいくらいのパートナーは、珍しく自分についてくるなと言い、尚且つこんなにも辺鄙な所…人気のないような場所へと移動している。
珍しさに驚く反面、少し、悲しい。
自分に隠し事をされている様で。
『それで、狼、どうかしたの?』
何時もならば相槌を打つか合いの手を入れるぐらいのほぼ一方的な会話。
なのに今日は歯切れが悪い。
「あーえーっと…クリスマスだな。」
『?そうね?』
同じことの繰り返し。
本当にどうしたものかと少しだけ心配が募る。
「…それでだな。」
言い淀み、顔を複雑に歪ませる。
そんなにも言いにくい事なのかと、こちらまで思わず身構えてしまうけれど。
「遠矢へのクリスマスプレゼントは何がいいと思う?」
漸く言った言葉に脱力。
思わず、素の声が出そうになったところで頭を仕切りなおして。
『クリスマスプレゼント?』
「そうだ。」
『遠矢へ?』
「遠矢へ。」
『なんで?』
自分では仕切り直せたと思っていたけれど、まだ混乱していたらしい頭は、思わず『何故』かを問うていた。
「?理由か?」
当の本人は言い辛そうにしていた言葉を言えてスッきりとしたのか何処か晴れ晴れした顔で。
「あいつはオレの大切なパートナーで、何時も傍に居てフォローしてくれる。だから、たまにはお礼をしておかないとな。」
いつも態度には見せないし、言葉にも出さないけど、そんな風に思っていてくれた事が嬉しくて。
一瞬言葉に詰まる。
その間にまた、言葉が繋がっていて。
「それに、遠矢はオレの一番の理解者だからな。」
誇らしげな顔に携える微笑み。
その言葉がまた嬉しくて。でも、その分悔しくて。
『…遠矢はアナタを理解していても、アナタは遠矢を理解してないみたいね。』
ちょっとだけ意地悪。
その言葉に物凄く変な顔で落ち込んでいるものだから。
『あなたが一生懸命考えた結果のプレゼントなら、遠矢はなんだって喜ぶと思うわ。』
一般論ともとれる本音を正直に伝えた。
20081202
その言葉が既に、何よりの贈物。
幸せの賜物。
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