桃
□胸が高鳴るその瞬間は、
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「ねぇ、裏葉、キスしていい?」
新しい楽譜に目を通してたら、突然聞かれて。
思わず、可笑しく顔が歪んだと思う。
「断る。」
冷たく言い放ってみても、引き下がるどころか逆に。
「いいじゃん、減るもんじゃないし…。」
下唇を噛んでじっと恨みがましそうに見られて、ちょっと拗ねた口調。
「いや、絶対なんか減る。」
そう、平静装うけど。
お前が知らないだけなんだ。
そんなこと言われて高鳴り早まるこの鼓動を。
「…」
無言で向けられる視線が痛いけど、それは気付かないフリ。
だってほら、未だこの心臓は強く強く脈打って。
一生に鼓動する心臓の数が決まっているなら、たったこれだけの言葉にもオレの寿命は削られていく。
20080209
欲しい言葉、嬉しい言葉は何時だって。
心臓に悪いものばかり。