「…さっむ…」
街をイルミネーションが彩る季節。 寄り添って歩いている男女の姿を後目に俺はゆっくりと街を抜けていく。
今日は午後から練習があるというので寒い朝はカルピンとゆっくりとこたつに入っていたけど、中々こたつから出られなくて渋々と練習に向かっている。いつもなら俺には専属の運転手がいるのに、その運転手が今日は
『悪ぃな、明日はどうしても外せねえ用があってよ!また今度奢ってやっから!』
と、電話を昨日の夜に残していったため、こうして自分の足で向かっているのだ。
いつも桃先輩が送ってくれていたから時間の把握が出来てなくて、少し早めに出たつもりだったけど携帯の時間を確かめては遅刻は確実だと思った。
大体、何でこんな寒い日に部活なんてあるんだろう。
テニスをするのは寧ろ楽しみなのに寒さのあまり身震いをしてこんな事を考えてしまう。 外に出たばかりだというのに耳がひんやりとしてきた。手をポケットの中に突っ込んで足を早めた。
今日の街は、昼間だというのにいつもより活気に溢れていた。
昼間なのに、目がチカチカする。
何でも日本で聖なる夜だとか言われている日らしい。
街にはイルミネーションが満遍なくほどこされていた。クリスマスツリー、クリスマスリース、サンタにトナカイ。
街はクリスマスに染まっていた。
クリスマスだからと言ってどうという事もない。俺は足早に部室へと向かった。
だが、
いつもの様に遅刻してきたんだけど、いつもとは確実に違う光景があった。
「……?。誰もいないじゃん」
いつもならレギュラーはすでにグラウンドで練習を始めている時間なのに、レギュラー以外の他の人たちも、いつもなら一番初めに来ている海堂部長さえもそこにはいなかった。
「………、ま、いっか」
良く考えればグラウンド走らないで済むじゃん。
手塚部長がいなくった今でもグラウンド10周という行いは健在でそれを覚悟しながら部室に向かったのだけれど。
部室のドアノブに手をかけながら、どこを見渡しても誰もいそうにない風景に戸惑った。 悪く考えれば今日は部活が休みになったとか?時間が変更になったとか?連絡ミス?
部室の鍵は開いてるんだろうか。
そんなことを考えながら扉を手前に引いてみるとカチャリ、と音がなったその時だった。
「おっチビー!」
「「「誕生日おめでとうー!」」」
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