□ある意味素直なヤツ
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6月。


まだ湿っぽさは残っているものの、少し暑くなってきたこの季節。
俺達の学校では体育祭が行われていた。

…つっても、人数が多すぎて、一人ひとりが出る種目が少ねぇから、選手になってるものと学年種目以外は結構暇なもので、競技の間、俺も同学年のやつらと話をしながら体育祭を眺めていた。


(…越前じゃねえか)


ふと顔を上げると、越前達の学年が入場している所だった。

どうやら、次は1年の学級種目をやっているみたいだった。


(これは応援するっきゃねーよな、応援するっきゃねーよ!)


ちょっと後輩が出るから応援させてな、と話の途中に抜けさせてもらい前を陣取った。ふと越前が出る種目内容が気になって、ポケットからくしゃくしゃになったプログラムを取り出して目を通した。


「…借り物競争?」


(あちゃー…。越前が苦手そうなもんじゃねえか。)

どうしても他人の力を借りないと完走が難しいその競技。運が悪ければ探し出すのも一苦労だろうし。
足が速いだけじゃどうにもならないこの競技は一位は無理かも、と苦笑した。

にしても、記録を取る係りは大石先輩なのか。
近くにいる越前と、少しだけ会話をしていた。


(ずりーな…)


俺も体育委員になれば良かった…なんて、内心でちょっとだけ羨ましがった。


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