□ねえ、信じてよ?
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「桃先輩、俺と付き合いません?」



二人きりになれば、俺は桃先輩にその言葉を掛けていた。

その度に桃先輩は、困ったように眉を下げて笑いながら上手く話をかわされていた。
















「ね、桃先輩」


今日も部室に二人きり。

着替えている桃先輩に対して俺は、未だ上が着替え中のはだけた格好で近づいた。


近づいて、


「…桃先輩。いい加減俺とさ、


付き合いません?」


桃先輩の首に、手を回した。



いつもはこんな事までしないけど、言葉はいつも通りの事を言った。




嘘偽りない、俺の言葉を。



行動以外はいつも通りだっただけど、ここから先は、


いつも通りではなかった。



桃先輩は、苦しそうな表情を一瞬見せたかと思うと、俺をキッと睨み、

俺の手を勢いよく振り払った。


「いい加減にしろよな、越前!…俺は、そういう冗談は大嫌いだ…!もう、うんざりだ…!」


そう言って、

ドアが壊れるんじゃないかというくらい乱暴に戸を閉めて、俺を置いて部室を出て行った。


無駄に部室に戸の音が響いた後、


部室には、俺一人がポツン、と

残された。



『俺はそういう冗談は大嫌いだ』


「……ちぇっ」


冗談なんかじゃないっての。


こっちは大真面目にやってんのに、さ。
失礼しちゃうよね。




部活帰りにはいつも被らない帽子を深く被った。


「……伝えるのって、こんなに難しいもんだっけ…」



冗談じゃないのに。


本気だったのに。




冗談っぽく…、見えたの…かな



本当の気持ちが伝えられても信じてもらえない?





そんな自分が悔しくて、


涙が出そうになるのを、唇を噛んで堪えた。






**


次は桃視点です。



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