□矛盾
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「えー…面倒臭いっス」
「良いじゃねえか、たまには良いだろ」

これは朝練の時に桃先輩とした会話。

桃先輩がいきなり「昼休みは図書室に行こう」と言い出し為、俺がそれに対して眉を潜めていたのがつい先ほどの事だった。


そして、すぐに昼休みになった。

桃先輩は何か借り物をするようだったので、念のための暇つぶしの為、何か持って行くか迷っていたところ、丁度堀尾に押し付けられた本があったので、それを持って昼飯を食べるべく屋上へと向かった。

いつもの昼休みは、大体屋上でごろごろする。晴れの日は、テニスコートでテニスをするに限るんだけど…。

「悪ぃな、俺の用なのに付き合わせちまって」
「いーっスよ、別に」

(俺にとっては、昼休みは貴重なのにな。…桃先輩は別に特別にも思ってないんだろうな)

女々しいとは雖も、桃先輩と昼休みにゆっくりしながら話しを聞いたりするのが結構好きな俺は、一日の楽しみが一つ減った気がして、内心舌打ちをした。


「どこか適当にくつろいどけよ、越前」

図書室に着くなり、桃先輩は、受付の人の所へと走って行ってしまった。
桃先輩を待って置く間、特にする事がない俺は適当に席に着く。

普段あまり本は読まないけど、図書委員にもなっている俺は、ここに来るのは初めてではなかった。
言うならば、授業や委員会以外で来た回数を数えるのならば、これが初めてになるけど。


教室などに比べて比較的静かな図書室は、正直言って眠くて仕方がなかった。

ご飯を食べた後という事もあるのか、あまりにも眠かったので、思い切って寝ようかと思ったが、皆がみんな、勉強をするか本を読んでいたため、何故か悪い気がして寝ることすら出来なかった。

(……俺も本でも読んどくかな)

朝に適当に借りた本。

堀尾に『お前にはこういうものも必要だ』、と薦められた。
とりあえず、その本を読んでみる事にした。

……のは良いのだが。


(…なんだコレ)


中身は、いわゆる『恋愛小説』だった。

題名は聞いた事があるから、有名な作品な事は分かっていたんだけど…
流石に中身までは把握していなかった。


(……ありきたり)


その話は、学生が恋愛をしている話で、何だかどこも見た事のあるようなシーンばかりがつらつらと書かれていた。

頬杖をつきながら、セリフさえもありふれているくだらないページをパラパラと捲っていく。

何か、余計眠くなってきた。




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