□諦めないから
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階段を登る足取りが軽い。

一足先に到着しているであろう、あの人の顔を思い浮かべながら一歩ずつ屋上へのかいだんを登って行く。

「おっ、越前!」
「桃先輩」

(やっぱり)

桃先輩はいつも決まって、昼休みにはここにいる。
パンを大きな口で食べながら、ここに座れとでもいうように自分の隣をポンポン叩く。

「今日は随分機嫌良いじゃないっスか」

桃先輩の近くに行き言われるがままに隣に腰を下ろした。

「お、分かるかぁ?実は今日さ、アイツとデートなんだよなー♪」

バックの中を漁っていた俺の手が一瞬止まった

「…へぇ。良かったじゃないっスか」
「おう!」

桃先輩はいつもよりも少し優しい笑顔で笑った。

あまり見られないレアな笑顔ではあるが、この笑顔は俺にとって残酷なモノでしかない。

アンタは知らないよね。
俺がアンタの事好きだって。



声を弾ませる桃先輩の話を適当に聞き流しながら頷いていると何やら騒がしい声が階段から聞こえてきた。
それと同時に屋上のドアが開くと見知った先輩の顔があった。

「不二〜早く早く〜!お昼休み時間なくなっちゃうよー!」
「英二先輩、不二先輩?!珍しいっスね。どうしたんスか?」
「ん〜?たまには違うところでお昼ご飯食べてみようと思ってねーん」

手をピースサインにしてブイブイと言いながら、俺たちのところにきて弁当を広げた。

2人の時間終了したな、と少し残念な気持ちよりも今は先ほどの会話が途切れた事に安堵を覚えていた。


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