短夢
□白王子と黒魔女
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許さない…許さない…許さない…!!
私の王子様を奪ったあの子が憎い!!
だから殺してやるっ!!
老婆に化けて毒林檎を売るの!!
深くフードを被ってあの子が住んでる家まで行くと、黒い髪に雪のように白い肌、血の様に赤い唇の人が見える。
顔はよく見えないが、あれはあの子だ。
フードを足元しか見えないくらい深く被り直した。
「すみません。」
そう声をかけるとこっちへやってきた。
「この林檎はいかがですか?最後の一個なんですけどね。」
毒林檎を差し出すとそれを受け取った。
その場で食べる音がする。
シャリシャリと言う音が快感に感じられる。
「美味しいですか?」
そう言った時、ボトッと食べられた林檎が落ちた。
そして倒れた。
思わず口角が上がる。
フードを上げた。
アンタの酷い死顔を見てあげるわよ。
でもそこにいたのは…
愛する彼だった。
微笑んだ口元がそのまま動かなくなり、頭が真っ白で思考が停止して何も考えられなくなる。
「綱吉…様…?」
私が来るのを知っていて、あの子のためにかつらを被り化粧をしてドレスを着て…死んだって言うの…?
顔は笑ったままなのに涙が溢れ出る。
全部あの子が悪いのよ!
あの子のせいで彼は死んだ!
彼があの子を守ったとしても、私はあの子を殺すわ!
白王子と黒魔女
(黒は白に染まらないの、止まらないのよ)
END
081015