短夢

□ちょっと遅れた私の彦星様
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「はぁ…最悪…。」



今日は七夕だって言うのに彼氏無し、予定無し。
気分を紛らわしに夜の七夕祭りに一人で行くと、がやがやした雰囲気が逆に辛かった。
ぼーっとしてただ人の流れに身を任せていると突然肩をたたかれ声をかけられた。



「ちょっとそこのおじょーさん!」

「…?」



振り向くと唇にピアスをしている怖そうな男の人3人が不気味にニコニコ笑っている。
…正直、気持ち悪い。



「君、1人?」

「そうですけど…何か?」

「1人って事は彼氏無しだろ?」

「可愛いのに、勿体ねーな!」



気にしてる事をそうずばずばと言わないでよ!ものすごいムカつくんだから…。



「せっかくのお祭だしさ、俺たちと楽しい事して遊ばない?ね?」



ナンパの仕方古いから!
大きく溜め息をつくと男の人たちはなんかイラッとしてしまったらしい。



「溜め息ついてんじゃねーよ!」

「…あの。」

「は?」

「うるさいんですけど。皆様の迷惑に…こっち見てますし…。」

「テメェ、調子のってんじゃねーよ!」



やばい…。なんかきれちゃったみたいだ。



「ちょっと来い!」



リーダーのような人に腕を捕まれ人ゴミから離れた林のようなところに引っ張られた。
後から他の2人も付いて来た。



「止めて!!離して!!」



手を振り払って逃げようとしたがすぐに捕まってしまった。



「テメェ逃げてんじゃねぇ!」

「きゃぁ!!」



2人に両手を押さえられた。
ボスらしき人がどんどん近付いてきて、服を思い切り破られてしまった。



「いやぁ!!」

「動くんじゃねぇよ?」

「触んないでっ!きゃぁ!!」



何故か突然押さえられていた手が軽くなった。
はっとして後ろを見ると男が倒れていた。



「なっ!テメェ何してやがる!」

「最近の若者はすぐキレちまうからいけねーや。」



ボスが叫ぶと後ろからマイペースな声が聞こえてきた。



「こんな事して済むと思ってんのか!」

「それはアンタじゃねーですかィ?」



声の主は黒い服に身を包んだ金髪の男の人だった。



「真選組かっ!?くそっ。」



ボスが焦った顔で逃げてしまうと、それに続くように倒れていた2人も逃げて行った。
そして真選組の男の人は溜め息をついた。
私を見て、上着を渡してくれたのでそれを着させて貰った。



「あの…ありがとうございますっ。」

「…暇ですかィ?」

「えっ…?」

「暇なら俺に付き合ってくれやせんかィ?」

「…??」

「良いなら付いてきて下せぇ。」



別に特に用事も無いので付いて行く事にした。
…暇なだけじゃなく何かびびっときた様な気がした。
着いた場所は人気の無い丘の上だった。
空を見上げると綺麗な天の川が掛かっていた。



「七夕祭りに女一人で来るなんて、寂しいですねィ?」

「…っ!」

「彼氏無しですかィ?」



もうなんでこうも気にしてる事をずばずばと言うかな…。



「貴方だってそうじゃないですか…。」

「だからアンタをここに呼んだ、って事でさァ。」

「…?」

「もう12時すぎでさァ。」



ずっと星空を見つめていた彼がぱっと時計を見て言った。
少し沈黙があった。
その間無意識に彼を見つめてしまっていた。



「実は今日誕生日なんでさァ。」

「え?じゃぁ誕生日になる瞬間を何もなく過ごしちゃったって事ですか…?」

「そういう事ですねィ。」

「お、おめでとうございます!私なんかとで良かったんですか…?」

「むさい男たちと過ごすより、アンタと過ごしたいと思ったんでね。むしろアンタじゃねぇといけねぇんでさァ。なんかそんな気がしたんで。嫌でしたかィ?」



彼が真面目な顔でそんな事言うから迂闊にもドキッとしてしまったじゃないか。
あの時のびびっときたのは気のせいじゃないのかも知れない。



「嫌じゃないです。なんだか…嬉しい、です…//」

「なら来年も祝ってくれやせんかィ?」

「はいっ。」



私はそうはっきりと告げた。



「その代わりアンタの誕生日も祝ってやりまさァ。」










ちょっと遅れた私の彦星様
(年に1回…2回でもつまらないんで、ずっと一緒にいやしょう?)










END
080708(総悟誕)


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