短夢

□今度は照れ隠し
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「土方さんなんか嫌いですっ!!もう来ません!!」

「……勝手にしろ。」

「……ッ!!」



私は屯所を走って出て行った。
土方さんなんか嫌いだ!!



なんでこんなことになってしまったのかと言うと…
私は土方さんの彼女でよく屯所に遊びにきていた。
最近、土方さんの煙草の量が増えていたのでそれを注意したら怒られたのだ。
「っるせぇ!!」って本気で。
瞳孔開いてて怖くて…泣いちゃって…こうなってしまった。
いつもなら「あぁ」って軽く流すのに今日はすごく怒っていた…。
すごく機嫌が悪い。




走って屯所を出てきてしまったがどうすればいいか分からない。
なんで怒られなきゃいけないのかな!!
意味分かんないよ。
私…なんかした?あぁもう!私は悪くないもん!土方さんが悪いんだ!!
イライラして目的地もなくただ街をふらふらしていると、もう日が沈み始めて街がオレンジ色に染まっていた。
人気もまた、少なくなっていた。
結構遠くまで来ちゃったな。
ちょっと怖いような…。



「きゃぁッ!!!!」



いきなり誰かに後ろから抱き着かれた。
驚いてビクッとすると「ったく…どこまで行く気だよ。」と低い聞き慣れた声とどこか安心する煙草の香が上から降って来た。
怖かった気持ちが彼の声と香で和らいできたがまたイライラが戻ってきてしまった。



「土方さん?いきなりなんなんですか…。」



完全に喋り方にもイラつきが出てしまっている。
最低だ…。



「さっきは悪かった。」

「なんであんなに怒ってたんですか。」



彼に問うと、少し間があってから答えは返って来た。



「…お前が最近、万事屋のヤローと楽しそうに話したりすっから煙草の量が増えちまったっつーのに。全然気付かねぇからイライラしてたんだよ…。」



あの鬼の副長が照れくさそうにそんな事言うから思わず笑ってしまった。
笑うんじゃねえ、ってまた照れくさそうに言う。
怒りなんかどっか行っちゃって、抱き着いた手を離した土方さんを見上げた。



「嫉妬してくれてたんですね。」

「っるせぇ。」

「じゃぁ後で一緒に銀さんをぼこぼこにしちゃいましょう?」



にこっと笑って言うと土方さんは、そーだな、と言って煙草をくわえた。



「あのっ追って来てくれて嬉しかったです…。」



そういうと彼は私の手をぎゅっと握った。










今度は照れ隠し
(また煙草の量、増えちまうじゃねーか…)










END
080228


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