アオキミオ

□深い森〜アオキミオ・V〜
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「…始めから、貴様は答えを持っているだろう?」
「そんなもの知りませんよ、私は。問うているのは、貴方個人の意志ですしね」
『彼』は、全く変わらないジェイドの物言いに呆れ、舌打ちした。
「…俺はもう、ルーク・フォン・ファブレにはなれない」
「では、アッシュ。今まで何処で、何をしていたのですか?」

「うそ……」
小さな声が、風にさらわれ、消えた。
「うそよ……」
声が少し大きくなり、比較的近い位置に居たアニスの耳に届いた。振り返ると、茫然としたままティアにしがみつくナタリアと、泣きながら顔を上げたティアの表情に驚く。
「嘘でしょう、ルーク!?だって、あなた、言ったじゃない!!」
「ティア、駄目!」
アニスの制止を聞かず、ティアは肩にしがみついていたナタリアを振り払い、立ち上がる。
「エルドラントで、アッシュが死んだって!!それなのに、どうして!?どうしてあなたがルークじゃないの!?どうして……!」
叫びながら数歩進んだティアは、アッシュに辿り着く前にくずおれた。
「ティア!」
「ナタリア、大丈夫!?」
ティアをガイが、ナタリアをアニスが支えに走る。
混乱しながらも、支えられなければ座っている事さえ出来ないティアとナタリアを見て、僅かでも現実を見据える覚悟のついたガイが、口を開いた。
「説明してくれ…一体、どういう事なんだ!お前は…本当に、ルークじゃないのか?」

「…話していなかったのか」
「当然でしょう?理論上の仮説と、たかがチーグル一体の成功例では、確証足り得ませんから。それに……誰にとっても、残酷な結末ですし」
「貴様がそれを言うのか!?」
「…そうですね。申し訳ありません」
彼の人生を変えてしまったフォミクリーの発案者であるジェイドが、非を認め素直に頭を下げる。
「止めろ!俺は、貴様に謝罪を求めている訳じゃない」
ジェイドの顔を上げさせると、声は出さず唇の動きだけで、言葉を伝えた。
「あいつらには、貴様から説明しておけ。いいな?」
「…分かりました。仕方ありませんねえ。いつもなら、こういうのはガイの役目なのですが……」
「知らない事を説明出来るか!…おい、待てよ!何処へ行くつもりだ?」
「貴様等に話す必要はない」
アッシュは、セレニアの花の途切れた道まで出ると、徐にローレライの鍵を抜きはなった。地面に突き刺すと、彼の足下に譜陣が現れる。ローレライの鍵を回転させると、譜陣が光り……刹那、彼の姿が、掻き消えた……

「消えた……?」
「あれも、ローレライの鍵の力なのでしょうか…?」
譜陣から放たれた音素力の強さを間近で感じ取ったジェイドが、感嘆と共に呟く。
「ジェイド……説明しろ、全て!」
「そうだよ〜、アニスちゃん、何が何だか全っ然分かんない〜!」
「……そうですわ、教えて下さいまし」
「彼は……本当に、ルークじゃないの……?」
未だ座り込んだままの2人と、支えに回った2人、立て続けに聞かれたジェイドは、先に場所を変える事を提案した。
「先程も申しましたが、夜の渓谷は危ないですからね。それに……少し、落ち着ける場所で聞いた方が、良いでしょうから……」


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