アオキミオ

□風と羅針盤〜アオキミオU・T〜
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異世界へと続く巨大な扉を抜けるとそこは……雪国であった。

「うおぉ、さぁっびいぃぃぃ!!」
剥き出しの腕で、やっぱり剥き出しの腹を押さえ、地団駄を踏みながらルークが叫んだ。
「荷物にマントがあっただろう、さっさと出せ!」
元々ルークよりも露出度の低いアッシュは、握っていた手を放し、荷物の袋を漁り始めた。
潰れたら困ると上の方に置いてあった大量の焼き菓子と果物を避け、なんとか引っ張り出したマントを、寒さに震えているルークの背中に掛けてやる。
「アッシュ、サ〜ンキュ〜!」
「お前の荷物を寄越せ、俺が探す」
「あったけ〜……ありがとな、アッシュ」
「……礼は、一度で良い」
ミュウをマントの内側に招き入れたルークは、微かに頬を赤らめているアッシュを眺め、にやにやと笑う。
「照れんなよ〜」
「照れてない!」
「またまた〜」
「くどい!!」
アッシュの荷物よりも更に菓子類の多いルークの袋からなんとか目当てのマントを引きずり出したアッシュは、交換する為にルークの顔面めがけて投げつけた。
視線からは……隠しきれない怒りが見て取れる。
これ以上からかうと、本気で怒られそうと悟ったルークは、マントを交換し、唐突に話題を変えた。
「しっかし、なんでまたこんな寒い処に……」
「この世界の地理が分からねえんだから、移動先が何処かなんて知るわけ無いだろう」
「そりゃま〜そうだけど〜……」
横殴りの雪で視界が遮られている上、近くには人影も、街らしき建造物も見当たらない。
太陽が見えない所為で時間も分からず、降りしきる雪……吹雪と言える程の強い風と雪の中では、野宿するのはあまりにも危険である。
「とりあえず……歩くか。あては無いけど……」
「そうだな。いざとなったら、また精霊の世界に戻れば良いだけだ」
荷物を担ぎ、風下に歩みを進めた時。ミュウがマントから顔を出した。大きな耳をピンと立て、ルークの肩によじ登る。
「どうした、ミュウ?寒いだろう」
「みゅみゅ、みゅうう!」
「ミュウ?」
「みゅう、みゅう!」
風下を指差し必死に何かを訴える姿に、風上を振り返る。顔に当たる雪の粒に顔を顰めながらも、ミュウに導かれるまま歩き出した。
「向こうに、何かあるんだな?」
「みゅう!」
「行こう、アッシュ!」
「おい、ルーク!」
引き留めようとしたアッシュの耳にも、異様な音が届いた。
何か、大きな物が倒れるような音と、甲高い悲鳴……
雪に煙る視線の先に、モンスターの群れが見える。狙われているのは、自分達ではない。横たわる何かの陰には、先程の声の持ち主が居る筈で……

2009年11/19up
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