アオキミオ

□Starry Heavens〜アオキミオ・U〜
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風を、感じた。
とても清浄な、森林の空気だ。

ここは…どこだ?
俺は、なんでこんな所に居るんだろう…

目を開けると、間違いなく森の中に居る。セントビナーの大樹のような、大きな木ばかりだ。
ゆっくりと立ち上がる。疲れてるのかな…感覚が変だ。立った筈なのに、目線が変わらない。どういう事だ…?地面が近い。下を向いて、気付く。大きいのは、木々だけじゃ無かった。草や、花、小石や土の一粒一粒が、とてつもなく大きく見える。

夢でも見てるのかな……?

頬を抓ろうと、手を上げたら…自分の頬が、掴めなかった。
「みゅ…みゅ?(あ…れ?)」
みゅ?みゅって、なんでだ?ミュウじゃあるまいし!
大木に手をかけ、寄りかかろうとした手が、空を切る。勢い余って、額を強打した。
「みゅみゅぅぅぅっ!(いってぇぇぇっ!)」
痛みで涙が浮かぶが、拭えない。その痛みが、これを現実だと告げている。
どういう事…なんだ?
頭を横に振ると、少し遅れて、顔に何かが当たる。視界の橋には、毛に覆われた…大きな耳……?
「みゅみゅぅみゅ?(嘘だろう?)」
よろよろと、歩き出す。歩いても歩いても、進まない。歩幅が狭いせいだ。
土の匂い、木や草の匂いが、いつもよりはっきり感じられる。その中に、水の匂いを見つけた。水に匂いがあるなんて、意識したの、初めてだ……
水の匂いの元は、小さな水溜まりだった。恐る恐る、覗き込むと……そこには、一匹のチーグルが居た。ミュウでは無い。毛色が違う。じゃあ、このチーグルは……
瞬きをすると、水溜まりに映ったチーグルも瞬きをした。片目を瞑ると、チーグルも……
「みゅみゅみゅみゅぅ〜!(嘘だろぉ〜!)」


水溜まりの脇で、呆然と座り込む。ぶつけた額はまだ微かに痛む。夢じゃないんだ……俺は……ルーク・フォン・ファブレは……何故か、赤毛のチーグルになっていたのだ……

必死になって、思い出す。確か、俺はさっきまで……エルドラントに、居た筈で……
「!みゅっみゅ!みゅっみゅ!?」
何度も、何度も叫ぶ…アッシュの名を。
ヴァン師匠を倒し、ローレライを解放した俺は…地核で確かに、アッシュを見つけた。それなのに、どうして俺は、こんな森の中に居るんだ?独りで……しかも、チーグルになって!
「みゅっみゅ!みゅっみゅ!みゅっみゅ〜!!」
俺は確かに、アッシュの鼓動を感じたんだ……アッシュ、生き返ったんだよな?それなのに……どうして俺は、生きてるんだ?
「みゅっみゅ!みゅっみゅ!」
ガサリと音がして、振り返る。
「みゅっみゅ!?」
木々の隙間から現れたのは……2頭のウルフだった。
まずい……ウルフはモンスターとしては弱い…けれど、今、俺はチーグルなのだ。闘う術が…分からない。
唸り声を上げながら、ジリジリとウルフが寄ってくる。一か八か……!
出てくれよ!!
「みゅみゅ〜!!」
気合いを込めて叫ぶと、小さな炎が口から飛び出した。
「みゅみゅ!(やった!)」
余り大きな炎ではなかったが、牽制にはなる。ウルフが怯んだ隙に、近くの木に飛び付くと、必死に駆け上った。
これから…どうしよう……
怒り狂ったウルフが、何度も木に飛びついては、爪痕を残して滑り落ちる。何とかウルフの来られない場所に上がる事は出来たけど…このままずっと、ここにいる事も出来ない…
その時……
「魔神剣!」
気合いの込められた声と共に、閃光が迸った。
地を走る光が、ウルフを凪払う。
「みゅみゅ〜みゅ(今の声)…」
良く知っている名前の技…だけど……
技を放った奴の姿を見たくて、木から降りる。
遠くからも目立つ、赤い服と赤いブーツ。跳ね上がった茶色い髪。意志の強そうな太い眉と、茶色い瞳…両手に剣を持った、二刀流の剣士……

知らない筈なのに、知っている……
彼の、名前は……


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