アオキミオ

□謳う丘〜アオキミオ・T〜
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澄み渡る青空の下…グランコクマ王宮前の広場には、大勢の兵士が集まっていた。正確に言うと、彼等は軍人ではない。『英雄』がグランコクマ王宮に居ると聞き、各地からやって来た義勇兵だった。
「陛下…何なんですか、この騒ぎは…」
「お前さんが障気を消した事を知って、新生ローレライ教団に傾倒するのを止めた連中が、手のひら返して、挙って志願してきてな…唯でさえ軍部の首脳陣がケセドニアに行っちまってるもんだから、人材不足でてんてこ舞いなんだ」
「…民衆心理とは恐ろしいですね…」
「それにしても〜いくら何でも多すぎじゃないですか〜?」
「アニス、あれを見て」
ティアが指差した先には…
「はぅわっあの辺に居るの、オラクルの紋章掲げてるよ!」
「あちらに居る方たちは…もしかしなくても……」
ナタリアの視線の先には、ナタリアの名を呼びながら何故か万歳三唱を繰り返している集団が…
「見て判る通り、マルクトだけじゃなく、キムラスカやダアトからも流れて来てるんだ。済まんが、お前さん達で何とかしてくれ…」
「何とかって言われても……」
「あまりにこいつ等が邪魔過ぎて、最終決戦に向けてケセドニアに送る筈だった物資の輸送作業が滞ってしまってな…元はといえば、お前達が此処に居ると知って集まったんだぞ」
「やれやれ…仕方ありませんね〜」
真っ先に重い腰を上げたのは、ジェイドだった。一旦は突入したエルドラントを出て来たのは、彼の惑星譜術の為だし、グランコクマに泊まったのは、彼の過去の過ちを清算する手伝いで疲れ切った体を休める為だ。珍しくも、責任を感じているのだろう。
「補給は戦時下において重要ですから…仕方ありませんね。私はダアトから来た方達を請け負います。アニス、手伝ってくれるかしら」
「うもう、仕様がないなあ…」
「アニス、陛下が特別手当てを下さるせうですよ」
「うはっ、マジっすか?アニスちゃん、頑張りま〜す」
目の色を変えたアニスは、声を張り上げながら走り去ってしまった。
「アニスったら…大佐、勝手にあんな事を言ってしまって良いんですか?」
「構わんよ、現金を要求するのは彼女位だろう?この騒ぎを収拾出来るなら、安いものだ」
「そうですか…では私も失礼します」
「ガイ、私達マルクト組も行きましょう」
「…だな」
「では、私とルークはキムラスカの民を…」
「ちょっと待った」
上手く二人ずつに別れた組み合わせに、ピオニーから待ったがかかる。
「ルークは俺が借りてくぞ」
「な、何でですか?」
「ルークに頼みたい事があるんだ。構わないか、ナタリア姫?」
「まあ…では、私は一人ですの?」
人数の多さに途方にくれていると、背後から声がかかった。
「私がお手伝いします。アルビオールの整備は済んでいますから、手が空いていますので…」
「まあ、ノエル。ではお願いしますわ」
昨夜、彼女がアルビオールの調整に呼ばれていた事を思い出したナタリアは、安心してノエルを連れ出した。
後に、男四人が残される。
「陛下が、ルークに頼み事…ですか?」
「何か問題でも、ジェイド?」
幼馴染みが、真意を図るべく見つめ合う。
「まあ、良いじゃないか。俺達はやるべき事をさっさと片付けちまおうぜ」
そんな二人の間に、ガイが不自然に割って入る。
「…まあ良いでしょう。行きますよ、ガイ」
「ああ、また後でな、ルーク」
「ルーク、お前さんはこっちだ」
「あ…はい」
ピオニーは、ルークを連れて王宮の中へ入って行った。



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2008年3/11up
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