アオキミオ

□sign〜アオキミオ・0〜
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レプリカ・ネビリムとの激闘に勝利した一行は、グランコクマで休息を取る事となった。口にはしなくても、全員が気付いていた。これが、最後の安らぎの時になるだろう、と…

アニスの意見で、元々グランコクマ在住のガイとジェイドは自分達の屋敷へ戻り、女性陣は宮殿の客室へ、ルークはガイの屋敷にそれぞれ泊めてもらう事になった。
「今更、宿代ぐらいケチらなくてもい〜んじゃねぇか?」
「ルーク、あっま〜い!いい?1ガルドを笑う奴は、1ガルドに殺されちゃうんだからね!!遣わずに済む金は倹約すべし!!だよ」
「(…それを言うなら1ガルドに泣く、だろうが…)ま、まあ、俺とジェイドは自分の屋敷の方が落ち着けるしな…」
「でっしょ〜?それにィ、宮殿の方が広くて綺麗だし、お布団はフッカフカ、食事は皇帝陛下お抱えシェフのお手製!宿屋よりも好待遇が待ってるんだよ?大変な目に合った後だし、ゆっくり休みたいじゃん」
「へいへい…」
アニスの言う、大変な目のきっかけを作った男を気にしたルークが振り返ると、当の本人はあらぬ方向を見つめながら歩みを止めていた。
「どうかしたのか、ジェイド?」
視線の先に在るのは…マルクト軍の基地本部だ。
ルークの言葉に、先行していた5人も振り返ると、眼鏡に触れたジェイドが口を開いた。
「今日は、ここで解散しませんか?」
「行き先は決まってますから、構いませんが…」
そう言いながら、ティアは天を仰いだ。疲れはあるが、日はまだ高い。何より、明日はエルドラントへ再突入するというのに、このまま解散しようというのが、腑に落ちないのだろう。
「王宮の晩餐には、私も顔を出しますよ。今後の話はその後にしませんか?それに…アニスではありませんが、最後の晩餐になるかもしれないなら、美味しい食事を頂きたいですからね」
「ぶーぶー。アニスちゃん一人だけが意地汚いみたいな言い方しないで下さいよう、大佐〜(…しかもさり気な〜く不吉な事を…)」
「気にするなよ、アニス(…どうしてこう、一言多いんだろなーこのおっさんは…)俺も久し振りに、美味い飯を食いたいからな。構わないよ」
「…しばらく美味しいお食事から遠ざかっていて、悪うございましたわね」
おどろおどろしい目つきの姫君が、女性恐怖症にずずいっと近寄る。この数日、野営時の食事当番はナタリアだったのだ。
「す…すまん、ナタリア…御覧なさい…謝るから、それ以上近寄らないでくれ…!」
「(ガイってたまに天然失言するんだよな…)俺も賛成だけど…急にどうしたんだ、ジェイド?」
「いえ…ちょっと、ディストに話がありましてね…アッシュの事で…」
「アッシュ…の…?」
ガイに詰め寄っていたナタリアの動きが、ピタリと止まる。全員の視線が、ジェイドに集中した。
「ええ。直ぐに済みますから、ここで待っていて下さっても構いませんが…」
「…私は…先に王宮へ参りますわ…」
ナタリアの体がふらりと傾ぐ。支えようと咄嗟に差し出したガイの腕を制したのは、ナタリア自身だった。
「大丈夫ですわ。ありがとう、ガイ」
気丈に微笑むが、顔色は少し悪い。
「それでは、私達も王宮へ…行きましょう、ナタリア」
「晩餐でお会いしましょう」
女性陣がナタリアと共に王宮へ、ジェイドは軍本部へそれぞれ向かっていった。「ナタリアはティア達に任せて、屋敷へ行くか、…ルーク?」
呼ばれた当人は、王宮へ向かう後ろ姿をじっと眺めていた。「どうした、ルーク」
「ガイ、俺も王宮へ行ってるよ。大切な話があるから、一人で…良いか?」
ルークの視線の先に、寄り添って歩くナタリアとティアの姿を確認したガイは、ルークの肩を激励の意を込めて叩き、無言のままひらひらと手を振りながら屋敷への道を一人で歩き出した。亡くなったアッシュを思い出した『ルーク・フォン・ファブレの婚約者』ナタリアと、実兄との決戦を控えた『ルーク・フォン・ファブレに思いを寄せている』ティア…大切な話とは、そのどちらか…若しくは両方なのだろう。そして、そのどちらも、気の重い話になるのは、間違いないのだ…
そんなガイの心を知らないルークは、小声で「…急がないと…」と呟き、駆け出した。
ナタリアに合わせて緩やかな歩調の女性陣をあっさり抜き去った背中に、ティアの声が掛かる。
「ルーク、何処へ行くの!?」
ルークは、振り返る事なく叫んだ。
「陛下の所!!」


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