短編
□ぼくのパパとママ
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* 雲雀目線 *
「…預かるとは言ったけど、僕は子守に向いてないから」
僕はフゥ太をソファに座らせて、あらかじめ宣言しておいた。
「大丈夫!僕いい子にするよ!」
にこーっと屈託なく笑う様子に誰かを重ねてしまった。
「…とりあえず今日と明日はディーノもいるから」
「ディーノ兄?恭兄のうちにディーノ兄も来るの?」
「そう」
「ほんと?僕ディーノ兄大好き!」
だってパパみたいでしょ?と言われて確かに、と思ってしまう。
その瞬間インターホンが鳴った。
「ディーノ兄かな?」
「あの人はインターホンなんか押さないよ」
玄関に行ってみると、意外にも来客はディーノだった。
「あなたインターホンの使い方知ってたの」
「馬鹿にすんな!誰かと話してたからさすがに、な」
「へぇ、意外と気が利いてるね」
当たり前だろ、と言いながら体を引き寄せられてキスしようとしてきたディーノを押し返す。
「だ、だめ」
「なんで?」
「それは…」
なんと説明したらいいものか、僕が口ごもっているとフゥ太が玄関までパタパタと走って来た。
「いらっしゃいディーノ兄!」
「フゥ太?よぉ、お前どうしてここにいるんだ?」
「明日までツナ兄とママンとパパンが旅行なんだ、だから今日は恭兄のおうちにお泊まりだよ!」
困っていた僕の代わりにフゥ太が説明してくれて助かった、のも束の間。
「ねぇ、ディーノ兄と恭兄はコイビトなの?」
その質問に我に返ると、僕はディーノに抱きしめられたままだった。
「あ、いやその、これは久々に会えて嬉しいなって」
「いいからはやく離してっ」
慌てる僕らに対してフゥ太はさして興味もなさそうな顔をしている。
そして、ようやく離された僕の服の裾を掴んできた。
「ねぇ恭兄ぃ、おなかすいた…」
うる、とした瞳で見つめられては言うことを聞かざるをえない。
「…宅配ピザでいい?」
「うんっ!」
じゃあ広告からメニュー探しといて、と言えばはーいという返事をして部屋へと戻っていった。
「…そういう訳だからあなたも手伝って」
「なんだか家族みてぇだな」
そう言いながら改めて抱きしめられる。
「恭弥は1日ママってわけ?」
冗談でしょ、と言おうとしてフゥ太の言葉を思い出す。
『だってパパみたいでしょ?』
「…だったらパパはあなただから」
一瞬ディーノは驚いた顔をして、それからちゅ、と軽いキスをしてきた。
「じゃあママン、俺シーフードピッツァが食べたい」
「あなたの奢りでね、パパ」