短編
□チョコレート・ディ 前日編
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夕飯の材料を買いそこねたので仕方なくコンビニに寄ると、白髪の問題児がいた。
僕と目が合った途端に慌ててカゴを後ろに隠した。
「よ、よぉ雲雀じゃねぇか」
明らかに挙動不審でなんだか気になった。
「…別に君がアダルト雑誌を買ってようと僕には」
「違ぇよ!」
んなモン買わねーよ!という彼の後ろのカゴをちらりと見ると
「…チョコレート?」
「あっ!」
何枚か板チョコが入っていた。
「ふーん、君も誰かにあげるの?」
「〜っ、そうだよ!悪りぃかよ!」
恐らく野球部の彼だなと思った。
「君も、ってやっぱりお前も跳ね馬にやるのか?」
「え?」
またあの人か。僕たちはセットじゃないんだけど。
「興味ないね。ねぇ、あげるなら板チョコじゃなくてこういうのの方がいいんじゃないの?」
僕は違う棚のリボンがかかったトリュフの箱を指差した。
僕から見てもこっちの方がバレンタインっぽい。
「あ?お前わかってねーな、作るに決まってんだろ」
「…作るの?君が?」
「あー、えっと、まぁ頑張ってみっかなと思って」
わずかに頬を染めて話す彼は、さっきの少年と同じ目をしている。
スーパーでチョコレートを見ていた女の子たちも。