長編

□ひとめぼれ
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キッチンを覗くと、洗い物をしている後姿が見えた。
綱吉の話を聞いていたディーノは、雲雀が想像よりも小柄で華奢な少女であることに驚いた。恐い、強い、狂暴、だけどたまに優しい、しか聞いていないディーノはもっと男みたいな、あるいは高飛車そうな女性を想像していたのだ。

ディーノがキッチンに足を踏み入れると、綱吉とは違い直ぐに気配に気付いた雲雀が振り返った。しかし、それが見たことのない金髪の男であることに眉をひそめる。

「誰……?」

一方、振り返った雲雀を見たディーノは絶句してしまった。
切れ長の黒い瞳、それと同じ色の髪。強気で涼しげな表情とは裏腹に幼い顔立ち。
思わず見とれた。所謂、一目惚れというやつだ。


キッチンに入るなり黙ってしまった男を雲雀は不審者かと疑ったが、先ほど綱吉を送ってきたディーノという男の存在を思い出す。
男にそう尋ねようと口を開きかけた瞬間、急にディーノが雲雀の元へ歩み寄ってきた。

驚いて言葉を呑み込んだ雲雀の手を取って、ディーノがおもむろに口を開いた。




「俺と結婚してくれないか?」





ダイニングの片付けをしていた綱吉は、キッチンから聞こえてきたガチャンバキッゴンドカァッバッシャーンという轟音に、やはり予想が的中したと思いながらキッチンへと走るのだった。


「姉さん!!ディーノさん!?」

予想通りなのだが、キッチンは水浸しでテーブルやらイスやらが散乱していた。
そして雲雀はディーノを睨みつけ、ディーノはといえばびしょ濡れで床に倒れている。

「ディーノさん!?!?」

慌てて綱吉が駆け寄るとディーノは唸りながら起きあがった。
そんなディーノに雲雀は鋭い視線を向けたまま言い放った。

「僕はあなたみたいな軽そうな男は嫌いだよ」

弱い男はもっとキライだ、と言い捨てて雲雀はキッチンから出て行った。

「いてて…なるほど確かに恐えーなぁ」
「すみません、大丈夫ですか?」
「あぁ、こんなん大したことねーって」

ディーノは笑って言うが、雲雀にかけられた水のせいで全身びしょ濡れだ。

結局、綱吉に言いくるめられたディーノはその日ボンゴレに1泊し、翌朝アリカンテへと帰って行くのだった。
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