長編
□ベーカリー・ボンゴレ
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パーティが終わり片付けも終わった頃にはすっかり暗くなっていた。
「もう9時過ぎてるんだ…」
綱吉はパンを作る工房に向かい声を掛けた。
「獄寺くん、片付け終わった?」
獄寺はボンゴレに住み込みで働くパン職人。
3年前に転がり込んできてここで働かせてください、と言ったときはどうしたものかと思ったが追い出す訳にもいかない。
とりあえずおいてみたところ、性格は荒々しいが真面目に働くので正式に従業員になっている。
その獄寺が何やらあわてた様子で返事を返してきた。
「じゅ、10代目!まっ、まだです!」
不審な物言いに、綱吉は何かやらかしたかなと思い工房に向かった。
「獄寺くん大丈夫?」
「わっ!?だだ大丈夫っス!」
工房に入った瞬間、獄寺が背中に何かを隠した。
「ねぇ何隠してるの?」
「いっいえ何もありませんよ!」
「怒らないから、皿でも割ったの?」
「いえっ、その、あの、」
言い淀む獄寺の後ろを無理矢理のぞきこんだ。
あっ、という獄寺の声なんか気にしない。何かあるなら雲雀に見つかる前に隠ぺいしなければならないからだ。
ところがそこには。
「…ケーキ…?」
甘い香りを放つデコレーションケーキ、の作りかけ。
ふと見れば獄寺の手には生クリームの絞り袋が握られていた。
「ねぇ、これどうし…」
「あーぁ、あれほど見つかっちゃダメだって言ったのに」
声に振り返るといつの間にか工房の入口に雲雀が立っていた。
「え?なに?どういうこと?」
全く意味がわからない綱吉をはさんで雲雀と獄寺は目を合わせ、獄寺は少し残念そうな顔をし、雲雀は苦笑いを零した。
「まぁいいや、バレちゃったんだからしょうがないね」
雲雀は綱吉に向き直ると珍しく柔らかな笑みを浮かべた。
「ねぇ綱吉、誕生日おめでとう」
「え?」
「昼は10代目の就任パーティーで終わっちまって、10代目の誕生日をちゃんと祝ってなかったんで」
「じゃあこれって…」
獄寺は綱吉の目の前でケーキの飾りの続きを作った。
最後に『HAPPY BIRTHDAY TSUNA』とチョコレートで書かれた白いウエハースを中心に飾る。
そしてロウソクを立て、獄寺が火を点ければ、小さな誕生日ケーキが完成した。
「綱吉」「10代目!」
「2人とも…」
「「誕生日おめでとう」ございます!」
綱吉が驚き固まっていると雲雀に「早く吹き消しなよ」と急かされた。
慌ててロウソクの火を吹き消すと、胸に嬉しさが込み上げて来た。
「あ…ありがとう、雲雀姉さん、獄寺くん」
「さ、じゃあ食べましょう!俺切り分けますんで」
程なくして綱吉の目の前にケーキの1/3にウエハースが乗った皿と紅茶が用意された。
綱吉はケーキを一口食べたところで思わず泣きそうになり、獄寺にはマズいですか!?と勘違いされ、雲雀には男らしくないと殴られた。