短編

□ダウト
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「恭弥、俺、もうお前には会わない」



ディーノは応接室に来るなり雲雀にそう告げた。
あまりに突然のことで、雲雀は思わず書類を書く手を止めた。


「もう日本に来ないんだ」

「……」

「イタリアで家庭を作れってロマにも言われてな」

「……」

「それに、俺は恭弥に愛されてないみたいだし」


雲雀はその言葉に目を見開いた。


「じゃあな」


ディーノは踵をかえして応接室から出ようとした。


途端、


「…待って…!」


雲雀がディーノを後ろから抱きしめた。


「…行かないで…愛してるから…っ!」


その声は震えていて、泣いているのだとわかった。








「…ごめん恭弥、俺も愛してる」


ディーノは振り返って雲雀を抱きしめた。


「全部嘘だよ。今日はエイプリルフールだろ?まさか恭弥がそんなかわいいリアクションするなんて」

「やっぱりね」

「え?」


毅然とした声に腕の中の雲雀を見ると泣いていた様子もなく、


「だと思ったよ」


ニヤリと口角を上げてディーノを見据えていた。


「今日はエイプリルフールだからね」



雲雀は正面からディーノに抱きついて言った。



「僕も愛してるよ、ディーノ」

「えっ?そ、それって…?」

「さぁね」



そのときディーノは、背中に回された雲雀の手が震えているのに気付かなかった。




end


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