短編
□素敵な日
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恭弥は応接室に入るなり、ソファーに座っている俺に向かって溜め息を吐いた。
「よう、お邪魔してるぜ」
「なんで教えてくれなかったの?」
「え?」
てっきり勝手に入るなと言われると思っていた俺は、何のことだかわからなかった。
「教えるって何を?」
その次の言葉も予想外だったけど。
「あなたの誕生日」
まさか恭弥の口からそんな言葉が出て来るとは思ってもみなかった。
「誰かに聞いたのか?」
「あなたの部下がそこで草壁と話してた」
恐らくそれはロマーリオが、数日前にイタリアで行われたキャバッローネの誕生会のことを話していたのだろう。
その日はファミリーが祝ってくれたけれど、俺は恭弥にも祝ってほしかった。
でもそんなキャラじゃないと思ったし、日本とイタリアで遠く離れていたし、自分自身当日まで忘れていたのだ。