長編
□ananas
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今日もヴァレンシアは良い天気。
そんな町のベーカリー・ボンゴレにはある男の声が響いていた。
「ひっばりっくーん!」
スキップで店内に入って来たのはパイナップルのような髪型の若い男。
その男は雲雀を見つけるや否や嬉しそうに手を振る。
「この六道骸、今日も君に会いに来ちゃいましグフッ!!」
雲雀は近づこうとした骸が視界に入るなり持っていたトングを投げつけた。それは綺麗に骸の顔面にヒットした。
「うぅ…相変わらずつれませんね……ですが!それも愛情の裏がえギャアア!!」
今度は無言でパンのトレイで殴りつける。
骸がすみませんすみませんと繰り返すようになったところで雲雀の攻撃は終わった。
「きょ、今日は注文されたカーテンを届けに来たんです!」
「あぁ…そうなの」
雲雀は納得して、やっと血まみれのトレイとトングを片付けた。
骸はこれでもドレスやカーテン、テーブルクロスなど布を扱う大きな店のオーナーで、ボンゴレの内装は骸の店『ananas』から取り寄せているものが大半を占めている。
店主は変態だが扱っているものは悪くない、という雲雀の意見から決まったことだった。
「で、カーテンは?」
雲雀は骸を一瞥し、手ぶらであることに眉をひそめた。
「あぁ、今からクロームが持ってきますよ。僕は一足早く雲雀くんに会いに来ました」
テヘ、と気持ち悪く笑う骸の言葉を聞いて雲雀が目を吊り上げる。
「へぇ……君は女性に荷物を持たせて置いて来たってわけか……」
「え、あ、いや、そんなつもりじゃ!」
青ざめる骸に、雲雀はパンをとるために掛かっていた新しいトングを掴む。
骸が「ひっ」と息を呑んだ瞬間、カランという音と共に店のドアが開いた。