小説
□【緋色】3話・河原
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雨ふりて
浴びるは我の
赤い罪
たなびく緋色に
闇を背負いて
【緋色】3話・河原
「脇を締めて!相手をしっかり見なさい!次!」
パンパンという小気味よい乾いた音が道場に響きわたる。薫は汗だくになって、福原道場の門下生たちを指導していた。
「うおー!!!っぐえっ!!!」
「次!」
けたたましい声とともにむかってくる相手を次々と倒し、一方、打たれたほうの男たちは苦しそうに喘ぎながら壁際へと這いずっていく。そんな薫を眺めていた高橋は、一段落ついた薫のもとへと近寄った。
「驚きましたね。女性とは思えない。まさかこれほどお強いとは」
「いえ、そんなこと!まだまだ未熟ですから・・・」
「それに・・・とてもお綺麗なのに」
「ききき綺麗だなんてそんな!」
「お世辞じゃありませんよ。とてもお綺麗です。あなたなら女性らしく着飾ったらもっときれいになるだろうなぁ。剣術なんか勿体ない」
ぴくり。
「いえ、私は剣術が好きなんです」
「あ、剣術をすべきでないというのではないんですよ。でもおしゃれに興味がないわけではないでしょう?」
「そりゃまぁ…」
「ああ、そうだ!後でいいものを差し上げますよ…。
その前に、お手合わせねがえますか?」
高橋はそういうと、いままでの笑顔からは想像もつかないような鋭い目で薫を見た。それを感じた薫は少し緊張した面持ちで高橋の目を真っ直ぐ見て言った。
「もちろん。お願いします」