短編夢小説

□ナツノオモイデ
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あの日、君が僕を誘ったのは、暑い夏の午後でした。
君には悪いけど、僕は初め、行く気なんてなかったんです。
僕は人混みが苦手だし、夏の夜なんてもっと苦手。
それに名前しか知らないような女の子と祭りに行くなんて、考えられませんでした。
でも行くことになったのはどうしてだったろうか…
そうだ、君の嘘のせいでしたよね。
「私、今度引っ越すんです…だから最後にって。」
「そうなの…じゃあ、」
「やった。行ってくれるんですね?」
「ああ、でも、どこに引っ越すの?」
「……」
問い詰めるとすんなり引っ越しの話しは嘘だといいました。
とても素直な君は嘘をついていられなかったようです。
君は何度も謝りました。
なんで君はあんな嘘をついたのでしょう。
それすら今の僕には知ることが出来ません。
でも、それが嘘だったとて、僕は「じゃあ、行かないことにしよう。」とは言いませんでした。
君の嘘がきっかけであっただけで、僕は君の声をひどく気に入ってしまっていました。
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