novel

□ぷろろーぐ
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「湊くんが編入してきて…、もう3年ですか…」

鮫島校長に呼び出され何事かと思えば、急に思い出話を語り始めた。

「月日の流れというものは、本当に早いものですね」

「三幻魔…そして光の結社…そして異世界での出来事…」

鮫島校長は目を閉じたまま話を続けた。

「私にとっては、まるで昨日の出来事の様です」

「その、どの出来事にも…、湊くんの姿があった」

「ああ、思い起こせば3年前…、赤い帽子の生徒が…」

う〜ん…
これっていつ終わるんだ?
やっぱり声かけなきゃ駄目かな??
何の為に僕を呼んだのか聞こうと、熱弁している鮫島校長の話の腰を折る。

「あの、鮫島校長…」

鮫島校長は目を開けると、思い出に浸って語っていた事に気付いたのか、咳払いをして話を元に戻した。

「コホン!さて、今日キミに来てもらったのは卒業式での式典の事です」

「式典ですか?」

鮫島校長は頷くと「卒業式では記念式典として、卒業模範タッグデュエルが開催されるのだが…」

「そうそう、キミもかつて在校生代表として参加した事があったね」

1年の時の話だ。
もうかなり昔の話に思えるくらい、此処での生活は密度の濃いものだった。

「その時は確か…遊城十代くんがパートナーで丸藤亮くんと天上院吹雪くんを相手に、タッグデュエルを行ったんだったね」

「あれは…我が校の歴史に残るとても良いタッグデュエルでした」

懐かしい話だな…と僕もその時のデュエルを思い出す。
圧倒的な攻撃力で襲ってくる亮先輩…カイザーの名に相応しいデュエリストだ。
吹雪先輩はおちゃらけた雰囲気からは想像出来ない本物の強さを感じた。

「そこで今回…卒業生の代表として、キミを推薦しようと思っている」

思い出の中にダイブしていた僕だったが、鮫島校長の言葉で現実の世界に浮上する。

「推薦って、僕をですか?十代じゃなくて??」

「うん、湊くんなら、キミなら…」

「前年度を遥かに超え、皆を感動の渦に巻き込む、究極のタッグデュエルを我々に見せてくれると思ったからです

僕は笑顔で話を聞いて居たけど、何か凄い期待をされている…。
自信なんて一つも無いですよ!?鮫島校長!!この気持ちに気付いて欲しいとテレパシーみたいなものを送信してみた。
鮫島校長は真っ直ぐ僕を見据える。

…もちろん、受けてもらえますね?」

送信失敗…アドレスを教えて下さいと心の中で呟いてみた。

「…」

もちろん、解っていますよ〜鮫島校長!
僕に選択権が無いことぐらい、やけくそで推薦の話を勢いだけで快諾する。

「殺ります!」

「うむ、ありがとう…意気込みは十分伝わったよ湊くん、承諾してもらえると信じていたよ」

鮫島校長に笑顔で言われ、釣られて笑うが完全に引きつっていると自分でも分かっていた。

鮫島校長は何事も無かったように、卒業模範タッグデュエルの詳しい説明をして下さった。

「まず…今回は卒業生と在校生の垣根を無くし、自由な組み合わせで卒業模範タッグデュエルを行う予定です」

RPGで旅立つ主人公に村長が、無駄に長い基本操作の話をしている、あの状況に近い気がする…。

「すきっぷ機能は付いてないんですか?」
「それは2週目からです、なので…キミにも自由にパートナーを選んでもらってもかまいません」

2週目…っていつ!!と突っ込むスキを与えず鮫島校長は説明を続け、消化不良の状態で話を聞く…。


「同級生…後輩…OB…先生…、この学校の人間でなくとも許可しますよ」


パートナーを選べて尚且つ誰でも良いんだ…
てか学校関係者じゃない人物を良く入れるよな…
ここのセキュリティーって甘いのかな?
だから乗っ取り事件とか起こるんだろうな〜と学校を分析している僕を置いて、鮫島校長は話は続くのだった。

「次に…今まで以上の素晴らしい式典とする為、選択したパートナーと共に式典の日まで共同生活をしてもらいます」

「同棲生活って事は、同じ部屋でご飯を食べたり、一緒にお風呂なんかに入っちゃったりして…「生活を共にする事で、パートナーとの心の絆を深め、より強固なパートナーとなって、一部のスキもない至高のタッグデュエルをしてもらいたいのです」

僕の話は全て無視の方向で進むようです…。

ゲームキャラみたいに決められた台詞しか喋れないんじゃないかと、心の中で愚痴を溢しながら、鮫島校長の話を最後まで黙って聞く事にした。

「キミの対戦相手となるペアはこれから決定しますが、他の生徒達にも同じ様に共同生活をしてもらいます」

「きっと…キミ達パートナーに相応しいタッグパートナーが現れるでしょう…説明は以上です」

他の生徒達も共同生活させるのか…
誰でも良いんだから男女でもオッケーだよな、って事は同じベッドで寝起きするって事か!?

「分かってると思いますが、節度は守って下さいね湊くん」

変わらない優しい笑みを浮かべながら鮫島校長は諭すように言った言葉に、僕は心を読まれた恥ずかしさから帽子を被り直すフリをしながらいつもより深く帽子を被った。

「まだ、時間はあるから、パートナーはゆっくり考えてもらっても…」

考える必要性を僕は感じていなかった、既に僕の中でパートナーは決まっていたから…。

「…」

僕は真っ直ぐ目線を向けると、鮫島校長は僕の答えが決まっていると解ったようだ。

「…その顔だと、もう決まっている様だね、きっと…その人物は湊くんにとって一生を左右する程の重大な人物…そうだね?」

重大な人物…って、鮫島校長の言葉は何かしら重い、と思うのは僕だけだろうか?

「…では、私にその人物の名前を教えてくれないかな?」

「湊くんが、生涯の伴侶だと思える程の、大切な人物の名を…!」

オケだった場合きっと一番盛り上がる見せ場なのだろう…。
だけどこれはプロローグ(始まり)だ見せ場は早すぎる。
とかカッコ良く言ってみたり!
なんて事を頭の中で考えながら、僕はその名を言う為に口を開いた。

「僕のたっぐぱーとなーは…」





END
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