novel

□涙と笑顔と
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私の部屋に居る天城カイトが突然こう言った…。

「お前の泣いた顔が好きだ…」

言われた私は、反射的に少しだけカイトと距離を取る。

「別に泣かせようとしてる訳じゃない」

では何故わざわざ言ったの?
時々カイトの言動が分からない。

今だって部屋に居るものの、一度も玄関から訪ねて来たことがないのだ。

いつも窓からやって来ては少し話して帰っていく…。

私もカイトに会いたいから嬉しいけど…、普通に(玄関から)入ったってバチなんて当たらないのに…。

「それで?」

私はカイトの方を見ながら、話の続きを聞くとカイトは顔を横に向け視線を外しながら「それは…お前の…………からだ」

何?
真ん中の部分が一切聞き取れない。

「何?」と首を傾げながら聞くと視線だけ私の方に向け少しだけ頬を赤らめる。

「お前の泣いてる姿が綺麗だからだ」
「悪趣味だね…」

私は間髪置かずに言うと食い掛かるようにカイトが近付き、私の両手首を掴み「さっきも言ったが俺はお前を態と泣かせたりはしない!」

近い…。
近過ぎる…。
無意識?
態と?
別に良いけど…。

「綺麗な私が好きなの?」
「お前の事が好きなだけだ」

なら…。

「なら…、名前で呼んで…お前は嫌…」

一瞬驚いた表情をしたカイトだったけど、直ぐに真面目な表情に戻す。

「すまない…波歌…」

カイトの声
私の名前を呼んでいる。

私は微笑んで「良いよカイト……」
手を離すとカイトは左手で私の頬に触れた。
その手はひんやりと冷たい。

カイトとの温度差で、私が高揚しているのが分かる。

そっとカイトは私の右頬にキスを落とす。

恥ずかしくて堪らないのに
カイトから目を離せない

カイトは私を抱き締める。
私より大きな肩幅だ、あまり男の子だとか意識をしない私だけど、流石に意識してしまう。
カイトは特別だから……。

「どうすればお前に……波歌にもっと自分の思いを伝えられるか考えていた…」

「自分の気持ちに素直に為れば良いんだよ…」

カイトはクスクスと笑い声を上げる、表情を見ることは出来なかったが楽しげだ。

「どうしたの?」

笑い終わると、私の言葉に答えるカイト。

「いや…波歌がハルトと同じ事を言っていて、ついな」

私はハルト君と同じ思考回路なのか…と思っていると、カイトはそっと私の耳元で囁き声で言った。

「俺の側に居てくれ…」

私はそっとカイトの体に手を回し「はい……」

ギュッとカイトが締め付ける。

ああ……。
私は貴方が好きだよカイト……。

貴方と一緒に居たい
貴方と同じものを見たい
貴方と……。





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