novel

□―夏の終わり―
1ページ/1ページ



打ち上がる花火を見た時の事、覚えてる?

ボクは覚えているよ…ずっとね











―夏の終わり―












斎王に連れられ、日本にある別荘で夏の終わりに花火を見ていた…

別荘は遠くで太鼓の音が小さく聞こえるくらいの場所だった、花火をゆっくり見るには最適だった

ボク達は別荘のベランダで軽く食事をしたりお酒を飲んでいた…

「ボーっとして、どうしたんだいエド?」

「うん?いや…改めて、日本の夏も良いものだと思ってね?」

ゆっくりとシャンパングラスを持ち上げ、打ち上がる花火をシャンパン越しに覗きながら言った

そんなボクを見て斎王は

「あんまり飲みすぎちゃいけないよ、エドはお酒が弱いだろ?」

ボクだってもう大人なのに、いつも子供扱いだ…

「別にそんなに飲んでないよ、…それに夏も終わりなんだ、花火も終わり…酔わずにはいられないだろ?」

「…もう酔っているんじゃないか「違う…まだ酔ってないよ!ただ…」


「ただ…花火を見ていると悲しいんだ…とっても綺麗に輝いて直ぐに散ってしまう儚い花…」

斎王は悲しい顔で

「エドは花火が嫌いかい?」

「嫌いじゃないよ?悲しいし、寂しくなるんだ…もう二度と会えないような…」

斎王が強くボクを抱きしめた…
思わず持っていたシャンパングラスを落とし、砕けた…

「花火の代わりにはならないけど…私はずっとお前と一緒に居るよエド」

「斎王…」

ボクは答えるように斎王の背中に手を回した…







斎王、君は花火のように消えないで…




ずっとボクの側に居て





終わり

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ