お題
□思い悩む10題
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先が見えない
目の前が真っ暗だとか、そのような言葉は幾度か聞いたことがある。
妻が重い病で死の床にいる者が、嫡男を喪った者が、捕虜となった敵将が、そのようなことを言っていた。
共通するものは、深い絶望。
そして、どうにもならないという諦念。
こんなことを考えているのは、日が一切指さない場所にいるからなのだろうか。
自分が眠っていたことも、今目を覚ましたことも、漸く認識する。
「嗚呼、暗い、な・・・」
当たり前だ。
目を瞑っている。
目は――開かなかった。
血でこびり付いて、開かないのか。
潰れていなければ――。
「暗かねぇよ。明るいぜ?」
――また、あの声。
傷の痛み同様に神経を弄う、この声・・・。
「目のことが、気になるか?」
気にならぬわけは無い。
嗚呼。
己の先行きもわからず、視覚さえも儘ならず・・・どちらにおいても先が見えぬなど、なんと滑稽なことか。
「・・・何、笑ってンだ?」
目蓋に、触れる指。
明確な意思を持って、傷口に埋め込むように押し当てられる爪。
漏れそうになる悲鳴を、噛み殺す。
「怪我の具合がどうかは知らねぇが――このまま抉ったら、面白いことになると思わねぇか?」
絶望が――明確に形を取り始めたような気がした。
後書き
・・・この時点では、まだ何とか友愛方向に持っていけるだろうと思ってたのですが・・・(遠い目)
わたしはダテサナを一々猟奇にしないと気がすまないのだろうか・・・と、自問自答。