お題

□思い悩む10題
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暗い道




振動が――響く。
ごわごわとした麻袋か何かに投げ込まれ、そのまま馬の背に括り付けられているらしい。

荷物と同じ扱いか。

舌を噛まぬようにだろう、猿轡を咬まされている。



――実際のところ、どちらが良いのだろう?

屈辱を飲み、再びお館様の御為に働くべく生き延びるか。
交渉や人質交換の材料に使われぬよう、潔く舌を噛むか。

どちらが良いのだろう?

たとえ拷問を受けたとて、情報を漏らさぬ自信はあった。
苦痛に屈するほど、お館様への忠誠は脆いものではない。

けれど己の我慢や信念の届かぬ問題――己の与り知らぬところで進む人質交換などは、対処しようがない。
そのようなことが決まったと伝えられたら、人質交換の場に引きずり出されたら、俺はその時舌を噛もう。
それが良い。
そうすれば、迷惑をかけぬ筈だ。
だから。
今はただ、生きよう。



血がこびり付いて塞がった目に、光は差さない。真っ暗だ。
目が開いても、光を感じることができぬやも知れぬ――そんな恐怖が、ちくりちくりと胸の裡を刺激する。
このように運ばれる道行が。
まるでこれからの己の先行きを暗示しているようだと、また、くすり、と笑いが漏れた。
 




後書き
 幸村の精神状態が危ぶまれる流れになってしまいました(爆)
戦国時代の捕虜の運び方なんて、わかりません(ぉぃ)
拘束して見張り付きで歩かせる・・・ぐらいでしょうか?
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