お題
□思い悩む10題
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冷たい刃先
冷えた肌に、温かい血が伝う。
嗚呼――これは刃の先が、咽喉に食い込む感触か。
伝った血が、胸の上を滑って流れていくのがわかる。
袴に血の染みができているかもしれない――そんな、今更どうでも良いことを考えている己がおかしい。
今、刃を突きつけている相手は、どんな表情をしているのだろう?
目の前は、赤黒い。
血が流れ込んで見えない。ひりひりと痛む。
このような部位を傷つけられた経験が無いので、傷の程度がどういったものか詳しくは分からない。
だが、浅くはない筈だ。
眼球が――傷付いているのかもしれない。
くすり、と笑いが漏れた。
嗚呼、これでは。
「たとえ助かったとしても、もうお館様のお役には立てぬでないか」
咽喉に浅く刺さっている刃の先が、揺れた。
また、血が咽喉を伝う。
このような状態で助かったとしても――目の見えぬ将など、逃亡の心配の無い良い捕虜ではないか。
たとえ目が潰れておらぬとしても、この目は暫くは開かぬだろう。
早く突き破れば良い。この咽喉を。
何故だろう・・・。
くすり、と刃を突きつける相手からも、笑いが漏れた。
後書き
幸村の一騎打ちの相手は、政宗様。
・・・でもこの、相手どころか語り部すら誰かわからない文章では、別に他の人でも・・・あ。
思いっきり「お館様」とか発言してるから、幸村ってわかりますかね。