雨色
□入隊
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「腑に落ちないんだが…」
十三番隊の隊舎への道中、今度は浮竹がレイへ話し掛けた。
それは元柳斎の話の中でふと思った疑問。
「零番隊やお前の中にいる…虚の事を内密にするのは分かるが、霊具の件に関しては言っても構わないんじゃないか?」
「ああ、その事なら…」
レイは両手を綺麗に合わさった襟元へと持っていき、そのままガバッと開いた。
その動作に目を丸くする浮竹だったが、彼を何より動揺させたのはいきなり露になった白く滑らかな鎖骨。
思わず見入ってしまいそうなそれから彼が慌てて視線を外す。
きっとどこぞの隊長なら気にせず見続けていた事だろう。
そして外してから気付く、今はない本来そこにあるべきモノ。
「れ、霊具がない…!?」
「うん。ちゃんと首にかけたのに無くなってるの。いや、今も実際霊圧は抑えられてるし、あるにはあるんだけどね」
「どういう事だ?」
「私が涅隊長に言った霊具の条件覚えてる?」
「私の霊力を平隊員程度まで落とし自分では外せない霊具と、カルが自分の意思で外に出られないようにする霊具を」
「…自分で外せない事…?」
「そう。涅隊長に聞いたらこれは着ければ吸収されるように体の一部となるんだって。カルに聞いてみても同じ。
どうして自分で外せない霊具が必要だったかとか、説明もしにくいし…重國が口止めしたのそのせいじゃない?」
「しかし、そうだとしても…こんな短期間でそんなものが…」
「うーん、分かんないけど前から研究してたんじゃないの?ほら、好きそうじゃん。あの隊長」
“人体実験的なの”レイがそう言えば、浮竹は本気で引きつった顔を見せた。
そうこうしているうちに十三と描かれた門に着き、それをくぐればやはり集まる視線。
レイを一度見た事がある者も、そうでない者も関係なく視線は集まるわけで。
「お帰りなさい、隊長ー!んん?この人は大虚が襲撃してきた時の!?」
「ちょっと邪魔よ!隊長お帰りなさい!あ、浮竹隊長の治療をしてくれた…白雪レイさん」
競い合うように浮竹の前へ出てきた二人は、大虚襲撃の時も言い合いをしていた三席の二人だった。
「彼女は今日から十三番隊に配属となったから、二人共よろしく頼むぞ。清音、仙太郎」
「はい!任せて下さい!!」
「あ、テメー!今俺が言おうとしたのに!隊長、こんなハナクソ女じゃなくて俺に任せて下さい!!」
「何よ!このワキクサアゴヒゲ猿!浮竹隊長は私に頼んだんだから!」
ギャーギャーとまたもや言い合う二人に、レイは目を丸くさせパチパチと瞬きをさせるのみ。