雨色

□震撼
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頑丈そうな扉が音をたてて開かれれば、そこには一人の女死神。

「ネム、今から霊圧の測定だ!ボサッとしていないで準備をするんだヨ、このウスノロめ!」

「はい、マユリ様」

暴言にしかとれない言い草にも慣れているのか、ネムと呼ばれた死神は更に奥へと消えて行く。

そんな彼女の後姿を見ていたレイに気付いたのか、マユリが誇らしげに話し出した。



「アレは私の義骸技術と義魂技術を結集して作った娘のネム、ここの副隊長だヨ」

「…つくった…?」

レイの顔が一瞬曇ったが、それには気付かず自分の最高傑作の話を広げるマユリ。

彼女の中にいる二人は、彼女の心の中で降る雨に打たれていた。

それは冷たく虚しく止む事を知らない涙の如し。



「ねぇ、しゃべってないで早くしてよ。俺待つの嫌いなんだから」

静かに出てきたカタルシスが珍しくイライラした様子で口をはさみ込む。

会話を邪魔され嫌な顔をしたマユリだが、新たな研究材料が現れた事に不気味な笑顔を浮かべ

レイとカタルシスを交互に見やると、その嫌な笑みを濃くした。

彼がどんな人格なのか知る由もない二人でも、何かを感じ取り頬を引きつらせる。

故に研究材料となる事に不安がないと言えば嘘になるだろう。

「まずは白雪レイ、君から診せてもらおうか」







「これで終わりだネ」

二人の不安は取り越し苦労だったようで、何事もなくマユリの作業は終わりを迎えた。

マユリは今しがた取ったデータを眺めながら

「素晴らしいネ、二人共。白雪レイの霊圧は予想を遥かに超えて高い。今まで作ってきた霊具では全く意味がないだろう。

 そしてカル。君は実に面白いヨ。胸の孔から見て虚だった名残はあるものの、その他はそこらの死神に近い。

 それは死神の中に長い間いたせいか…それとも…」



あーだこーだとブツブツ言い出すマユリを見、先入観によって決め付けていた自分を戒めるレイ。

彼は研究者として素晴らしいのだと思い直した矢先の事、

「まぁ君達二人は私が改造する前に今の通常の状態を研究したいネ。

 そしてある程度の成果が得られれば、まずは毒を与えて…いや先に精神へ刺激を…」

またもやブツブツ言い出したマユリ。

だが聞こえる内容は正気ではなく、レイもカタルシスも用の無い限りここに近付かない事を心に決めた。

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