雨色
□作成中
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たくさんの人が浴衣を身に纏い
心なしか足取り軽く進み行く
空に華が咲くまできっともう少し
祭りの中心から少し離れたここ、住宅街にも賑やかな音は届いてくる。
空が薄暗くなるのに比例して通行人は増え出し、その皆は一様に同じ方向へ向かっていた。
そんな中レイはと言えば…
「お兄ちゃん!私の髪留め知らない!?」
「知らねーぞ?」
「どこいったんだろ…花梨ちゃん知らない?」
「私も知らないよ。一兄一緒に探してやれば?」
「おい、何で俺が!?」
黒崎医院の看板が掛かった家の塀にもたれ、度々聞こえてくる家族の音に肩を揺らしていた。
例の浴衣はやはりレイに素晴らしく似合い、これ以上ない程美しいと言っても過言ではなく
笑う度に頭が揺れる事で、まとめた艶やかな黒髪にささった藤の簪が揺れる。
それはどこか幻想的でもあった。
「待たせてる上にうるさくて悪ぃな」
急に掛けられた声に驚く素振りすら見せず、レイが振り返る。
「いえいえ。温かくて良い家庭なのが分かって、聞いてて楽しいですよ。一心さん」
「そうか」
動揺していた前回とは違い、霊圧を感じ取っていたであろうレイの反応に彼は口を緩ませた。
「あれ?浴衣着てるって事は一心さんも祭りに?」
「おお!うちの可愛い可愛「お兄ちゃん待ってよ」…娘達とな」
噂をすれば何とやら。
ドタドタと騒がしい音にまたレイの簪が揺れる。
「わりっ、 レイ! 待たせ…た……」
「一兄ってば何止まっ………」
こうして黒崎一家との出会いとなるのだが、それは沈黙から始まったのだった。