雨色
□訪問
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“来週の土曜日に花火大会があるんだけどよ…一緒にいかねーか?”
「デートか!?」
「別にそんなんじゃ…」
「何を言っておるのだ!二人きりならデートではないか!
もちろん行くのだろう?」
「うーん、どうかなぁ?いきなり来週って言われても休めるかどうか」
ワクワクと楽しそうに問うルキアと、苦笑をもらす現世任務帰りのレイ。
二人は十三番隊隊舎の廊下でばったりと会ったのだった。
「最近のレイは休みも取らず仕事ばかりだと浮竹隊長も心配しておったからな。その日特に何も無ければきっと休めるぞ!」
「まぁ取り合えず今から現世任務の報告書書くから、それ持って行く時に言ってみる」
「そうか。…ならば今から私が浮竹隊長へ良いように言っておいてやろう!
ちょうど私もこの書類を持って行くところなのだ」
確かにルキアの手には数枚の書類が握られていて…
「うーん、せっかくだけど良いよ。…って聞いてる?おーい、ルキアー」
レイの断りの声は、最後に“任せろ”と言うなり背中を向け進み行くルキアには届かなかった。
そして廊下に一人になったレイはつい先程の事を思い出す。
「一緒にって、私は人間には見えないし…
周りからすれば一護が一人で花火見てるように思われちゃうのに…良いの?」
「あ、あー、そんなもんは気にしねーけど…」
女慣れしていない一護の誘いに、レイもたどたどしい日本語になってしまう。
「行けるか分かんない…でも………行きたいな」
レイの答えを聞いた一護は安堵の息を吐きながら笑った。
その時は何も思わなかったレイだがよくよく思い返してみれば、これではルキアの言う通りデートではないか。
考えると考えただけ複雑な気持ちが生まれてしまい…
彼女は軽くかぶりをふって執務部屋へと足を進めた。