雨色

□秘密
1ページ/8ページ


満開に咲き誇った桜がはらはらと散り始めたこの頃の今日、乱菊主催の花見が行われる事となった。

それを伝えにきた彼女にレイは困惑顔を向ける。

その理由とは…



「えー!?レイ、アンタ今日現世任務なの!?」

「夕方から行って特に何もなかったら、業務終了間際に帰って来れると思うけど…」

「なんだ。それなら問題ないじゃない。先始めてるから後からいらっしゃいな。

 じゃあ私は皆に伝えに行かなきゃいけないから行くわね」



満足そうな笑みで乱菊が言う皆が何人なのかは不明だが、今が執務中だという事は確かだ。

その今を使って伝えにいく、つまり…サボり。

きっと銀髪の天童は、今頃眉間にいつも以上の皺を寄せている事だろう。





平隊員達が机に向かい書類と睨みっこする中、窓からヒラヒラと入ってくる地獄蝶。

蝶は坦々と書類をこなすレイの前へと躍り出て、右手の人差し指へ止まった。

そのまま何事かを伝えれば、再びヒラヒラと窓からその身を消し

「白雪、さっき地獄蝶が来たんだが」

同時に浮竹がこの部屋へ入ってきた。



彼は最近調子が良いらしく、業務以外は隊首室である雨乾堂よりも、こうして隊舎にいる事の方が多い。

「それなら私のところにもきたよ」

「だったら今から行ってそのまま現世へおりれば良い。夜は花見をするんだろう?書類はこちらで片付けよう」

そう、地獄蝶が伝えたのは元柳斎の呼び出しで、話が長くなるから時間を作って来いというもの。



「良いの?大丈夫?」

「ああ。白雪に数日おきで治療をしてもらってからビックリするくらい調子が良いんだ」

ニッコリと人好きしそうな顔で微笑えまれ、レイは任せて隊舎を後にした。





地獄蝶の言付けに話の内容まではなかったが、レイの中ではだいたいつく予想。

案の定、一番隊の隊首室について元柳斎が話し出すのはその事についてだった。

「今し方四十六室に聞いたが…これは誠か?お主が死神であり人「聞いたんでしょ?全部本当よ」………」

半信半疑で聞いてくる元柳斎にレイは真剣な目で返す。



双方の眼が外れる事無くぶつかり合い沈黙が続いた後、大きなため息が隊首室に響いた。

「…四十六室が言っておった。昔の英雄は、とんだ厄介者になって戻ってきた…とな」

「間違ってないじゃん。と言うかぴったりな言い回し?」

複雑な表情は笑いで返される。



「で?私の処遇はいかほどに?」

「…うむ。それを伝えようとこうして呼んだのじゃ。実際事に移すのはまだ先の話ではあるが…

 白雪レイ、お主には―――――」

次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ